
216.52山之内淡 / AWGLによる、東京の「ある漫画家の自邸」。都心の住居兼仕事場。“物語性”を持った創作に貢献する存在を目指し、大地が“めくれ上がる”様な外観と“アメーバ状”のヴォイドが作る複雑な内部を持つ建築を考案。コロナ禍以降に変化した働き方にも応える



山之内淡 / AWGLが設計した、東京の「ある漫画家の自邸 / A Japanese Manga Artist’s house」です。
都心の住居兼仕事場です。建築家は、“物語性”を持った創作に貢献する存在を目指し、大地が“めくれ上がる”様な外観と“アメーバ状”のヴォイドが作る複雑な内部を持つ建築を考案しました。また、コロナ禍以降に変化した働き方にも応える空間となっています。
東京都心部。間口4.9m・奥行14.7mの奥に細長い狭小敷地に建つ木造戸建住宅。施主は新進気鋭の漫画家である。
求められたのは、漫画家の仕事がこの家の中で完結できること。外に開きすぎないコンパクトな住まいであること。何よりも、創作へのインスピレーションを与えてくれる空間であることが求められた。
「日常から数cm浮いているような建築」をつくりたい、と思った。あくまで具体的な日常と接続しつつも、どこかフィクショナルな物語性が介在する、そんな建築の在り方を目指した。
前面道路に面する西側壁面は、大地が大きくめくれ上がるイメージで、無窓の曲面耐震壁として立ち上げ、耐震壁をくり抜くかたちでトンネル状のアプローチを計画した。日常から非日常に一歩足を踏み入れる、映画のワンシーンのような導入とする意図である。
全体の構成は、奥に細長い敷地を最大限活かす目的で、東側の敷地奥手を三層・西側の前面道路側を二層のスキップフロアとし、スキップする床レベルの順番を一部入れ替え、かつ極端な高低を与えた。
北側には間口1.2m・最大高さ5.5mの光庭を挿入。他の開口部は可能な限り減らし、家中をアメーバ状に拡がるヴォイドに対して明暗のコントラストを与えた。そこに階段を一直線に通すことで、高低・明暗のコントラストの利いたヴォイドの中を突っ切っていく、身体的なストーリーのある立体構成とした。
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以下、建築家によるテキストです。
日常から数cm浮いているような建築
東京都心部。間口4.9m・奥行14.7mの奥に細長い狭小敷地に建つ木造戸建住宅。施主は新進気鋭の漫画家である。
求められたのは、漫画家の仕事がこの家の中で完結できること。外に開きすぎないコンパクトな住まいであること。何よりも、創作へのインスピレーションを与えてくれる空間であることが求められた。
「日常から数cm浮いているような建築」をつくりたい、と思った。あくまで具体的な日常と接続しつつも、どこかフィクショナルな物語性が介在する、そんな建築の在り方を目指した。
まずはじめに漫画家に所縁の深い敷地を選定した。
前面道路に面する西側壁面は、大地が大きくめくれ上がるイメージで、無窓の曲面耐震壁として立ち上げ、耐震壁をくり抜くかたちでトンネル状のアプローチを計画した。日常から非日常に一歩足を踏み入れる、映画のワンシーンのような導入とする意図である。
全体の構成は、奥に細長い敷地を最大限活かす目的で、東側の敷地奥手を三層・西側の前面道路側を二層のスキップフロアとし、スキップする床レベルの順番を一部入れ替え、かつ極端な高低を与えた。
北側には間口1.2m・最大高さ5.5mの光庭を挿入。他の開口部は可能な限り減らし、家中をアメーバ状に拡がるヴォイドに対して明暗のコントラストを与えた。そこに階段を一直線に通すことで、高低・明暗のコントラストの利いたヴォイドの中を突っ切っていく、身体的なストーリーのある立体構成とした。
現代漫画家のライフスタイルもコロナ禍の中で大きく変化した。
オンライン制作が主となり、従来の漫画家のアトリエのように、アシスタントが一堂に会する姿はもう見られない。代わりに、自邸が打合せの場となり、メディア露出の際の撮影スタジオの役割を果たすようになった。
現代における漫画家の仕事は、「1: 創作(閉じる)」「2: 打合せ(部分的に開く)」「3: 取材の受入れ(開く)」に分けられ、それぞれにあったプライベート/パブリックの濃淡が求められる。コンパクトな住まいの中で、繊細な場所の使い分けを可能にする“溜まり”を、ヴォイドの設計によって提供することを意図した。
合理性を突き詰めて考えつつも、土地・場所性と接続した大らかな物語性を内包する建築をつくっていきたいと考えている。
(山之内淡 / Tan Yamanouchi & AWGL)
■建築概要
題名:ある漫画家の自邸 / A Japanese Manga Artist’s house
所在地:東京都
主用途:専用住宅
設計:山之内淡(Tan Yamanouchi & AWGL)
構造:三原悠子(Graph Studio)
施工:池部泰広、西出圭佑(泰進建設)
構造・構法:木造在来工法
基礎:べた基礎
階数:地上2階、地下1階
敷地面積:74.0㎡
建築面積:44.16㎡
延床面積:86.45㎡
設計期間:2020年5月~2021年9月
工事期間:2021年10月~2022年9月
竣工:2022年9月
写真:田中克昌
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外構・床 | アプローチ床 | モルタル 金鏝抑え |
外装・壁 | アプローチ壁 | 天然漆喰左官仕上 |
外装・屋根 | アプローチ天井 | ステンレス板 曲げ加工 バイブレーション仕上 |
外装・壁 | 外壁 | 土塗り壁 通気構法 |
外装・建具 | 開口部 | LOW-Eトリプルガラス木製サッシ |
外装・屋根 | 屋根 | ガルバリウム鋼板 竪はぜ葺き |
内装・床 | サンクンリビングダイニング吹抜け床 | チーク無垢フローリング |
内装・壁 | サンクンリビングダイニング吹抜け壁 | 珪藻土左官仕上 |
内装・天井 | サンクンリビングダイニング吹抜け天井 | 珪藻土左官仕上 |
内装・床 | キッチン床 | チーク無垢フローリング |
内装・壁 | キッチン壁 | ステンレス板 バイブレーション仕上 |
内装・天井 | キッチン天井 | AEP塗装 |
内装・床 | 洗面所床 | チェリー無垢フローリング |
内装・壁 | 洗面所壁 | ガラス鏡 |
内装・天井 | 洗面所天井 | AEP塗装 |
内装・床 | 浴室床 | マイクロセメント左官仕上 |
内装・壁 | 浴室壁 | マイクロセメント左官仕上 |
内装・天井 | 浴室天井 | マイクロセメント左官仕上 |
内装・キッチン | 厨房機器 | キッチン本体:ステンレス制作 |
内装・水廻り | 衛生機器 |
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