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■概要
スイス、ジョルニコにある美術館。ハンス・ヨーゼフソンの彫刻作品を展示している。この建物が建設されるべき場所は、建築家によって選ばれたという。
建築家は、建物を設計しただけでなく、美術館へのアプローチ、運営方法、全てを含め、全ての経験を美術館と捉え設計したのではないかと思う。
■アクセス
ジョルニコは、
スイスの南部、イタリア語圏にある小さな町である。一時間に数本しかない電車で駅まで行き、バスに数十分乗ると、やっとこの町に着く。
この建物は、常時開いているわけではなく、来訪者がいないときは、施錠されている。そのため、建物に向かう前に、町に一つしかないカフェに行き鍵を借りなければいけないのである。この一般的な美術館にはないプロセスが、この建物、作品を見るというストーリーの一部となり気分が高まる。
建物は、カフェから建物までは距離があるため、町並みを眺めながら歩いていくことになる。建物は石を積んで作ったような、素朴な建物で非常に雰囲気がある。この建物の間を抜けてあるいていくとようやく建物に辿り着く。
■外観
建物は、町に背を向けて建っている。そのため、まず目に入るのはコンクリートのヴォリューム、塊だけである。その印象は美術館というより町はずれにある倉庫といったものだ。それは、建物のコンクリートの表面の仕上げの粗さ、メジの取り方にもよるだろう。パラペットの立ち上がりもないため、雨水はコンクリート表面に流れおち、その跡を残している。それは、建物が、長い時間を経てここに建っている事を感じさせる。この建物を見ていると、荒いコンクリートの持つ良さ・美しさに気付かされる。ただ、フラットに均一に作られたコンクリートだけが美しいとは限らないのだ。どちらが良いというのではなく、そのどちらにも良さがあり、マークリはここで荒いコンクリートの良さ・イメージを選び取ったのではないかと感じるのだ。
■内部
カフェで借りた鍵をエントランスドアの鍵穴に差し込み回す。鉄製の重みのある扉を開ける。特別な建物に入るような緊張感を感じる瞬間。内部は三つの部屋で構成されており、それぞれのプロポーションは異なる。そして、全ての部屋に等しくハイサイドライトが取り付けられており、光が落ちる。全て同じ素材が使われているのだが、寸法の違いで、それぞれの部屋の印象はまったく異なる。また天井の高さの違いで、室内の明るさには変化がつけられている。
■ヨーゼフソン
彫刻家ハンス・ヨーゼフソンは、ピーター・マークリの友人で彼が多くの影響を受けた作家である。マークリの初期の住宅作品には、ヨーゼフソンの彫刻がファサードに取り付けられており、重要な役割を果たしている。
このヨーゼフソンの彫刻を見ていると、マークリの建築に通じる姿勢を見出すことができる。それぞれは、同じブロンズの彫刻なのだが、その表面のテクスチャーの多様さに驚かされる。そして、その違いによって彫刻は様々な印象を与える。これは、マークリの建物にも言えることで、彼の素材に対するアプローチ、とくに建物外観に用いられる素材の選択は、ヨーゼフソンの影響があるように思われる。
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Approximations: The Architecture of Peter Markli
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