
湯浅良介による、建築展「Anybody Seen The Same River Twice?」が開催されます。
プリズミックギャラリーを会場に開催されます。オフィスユアサ・スタジオユアサ・ゴッティンガム・湯浅良介が出展し、“不可逆な時間に対する空間の可逆性”を“視覚的な問い”として投げかける。開催期間は、2025年3月16日(日)~4月26日(期間中休廊日あり)。入場無料です。展覧会やトークイベント等の情報は公式ページに掲載されています。
流れる川のように、私たちの住まう世界もまた決して同じかたちを保つことはありません。この時間の不可逆性について、ヘラクレイトスは「同じ川に二度足を踏み入れることはできない」と言い、鴨長明は「流れる川は絶えずして、しかももとの水にあらず」と記しました。本展は、そうした絶え間なく変化する世界の中で、時に川の流れを遡り、時にその先を見据えながら、視線の浮遊を可能にする舟のようなものをつくる試みです。
現代において、私たちの経験は、かつてないほど断片化し、加速度的に変化しています。デジタル技術の進展により、時間や距離の感覚は曖昧になり、リアルと生成、記憶と記録、個と群の境界は、ますます不確かになりつつあります。移動の自由度が増し、同時に情報の流れが加速するなかで、私たちが立つ「場」や「空間」は、どのように認識され、どのように意味を持ちうるのでしょうか。その変化は、物理的な空間の捉え方にも影響を与え、可視・不可視の領域や現実と仮想の交錯を生み出しています。社会の構造が変容し続けるなかで、私たちは自身の立ち位置をどこに見出し、どのように世界と関わるのでしょうか。
オフィスユアサ、スタジオユアサ、ゴッティンガム、湯浅良介らによる出展作品は、コラージュ、写真、オブジェ、ドローイングを通じて、この不可逆な時間に対する空間の可逆性を、それにまつわる視覚的な問いとして投げかけます。複数の時間軸が交錯し、過去と現在、個と群がせめぎ合うなかで、認識のズレや知覚の揺らぎを浮かび上がらせます。会場には、オフィスユアサの藤井杏莉、松井康平による「台座のためのマクガフィン」が展示されるほか、スタジオユアサからは、慶野仁希、藤原禎之が、それぞれの研究・制作から選出した作品群を発表します。ゴッティンガムは、近年取り組んでいる「留保」をテーマにしたインスタレーションを展開し、湯浅良介は、紙に描くというプリミティブな方法を用い、描くことと消すことを繰り返すクロッキーを展示します。
本展は、単なる展示空間としての場ではなく、川のように絶えず変化し続ける視点の往復運動を誘発するものとして機能します。時間は流れ、空間が横たわります。遡ることも、飛び越えることもできない時間を、空間という媒介を通してなら往来できるかもしれません。空間がもつ多層な可能性のなかで、たゆたう川に身をゆだねながら、私たちはこの川を何度、どのように渡るのでしょうか?
以下に、詳細な情報を掲載します