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■概要
スウェーデン、ストックホルム郊外にある葬祭場。建築家グンナー・アスプルンドと、シーグルド・レヴェレンツが共同で設計を担当した。なお設計期間は25年にも及んだ。敷地内には、三つの礼拝堂がある。一つ目は、聖十字礼拝堂(アスプルンド設計、1940)。敷地内に入って最初に目に入る建物で、石畳の道に沿って建てられている。機能としては二つの礼拝堂、待合室などがある。二つ目は、森の礼拝堂(アスプルンド、1920)。聖十字礼拝堂をこえて、さらに奥に、入っていった森の中に静かに佇んでいる。この礼拝堂は「古代イタリア神殿から受けたと思われるインスピレーションに、スウェーデンのヴァナキュラーな農家や教会のイメージが重ねられた。」※1といわれている。三つ目は、復活の礼拝堂(レヴェレンツ、1925)である。場所は、葬祭場の一番奥に位置している。エントランス部分には、オーダーが配置されていて、古典という印象を受ける。各部分の寸法は、厳密な比例によって決定されたことが、研究によって明らかになっている。また、この森の葬祭場は、世界遺産にも認定されている。
■エントランス
ストックホルム中心部から地下鉄に乗ること数十分で、最寄の駅に到着する。駅を降りて葬祭場までは、歩いて5分ほどだろうか。駅から葬祭場までの道にも樹木が植えられており、緑のアーケードになっている。そこを抜けると、シンメトリーに石壁を配置した葬祭場のエントランスが姿を現す。この壁面は、よく見ると奥に行くほど、高さが抑えられており、パースペクティブの操作が行われていることがわかる。※2(写真をよく見てもらえば分かると思います。)これは古典的な建築(パラディオの劇場等)によく使用される視覚効果を利用したものだといえる。こうする事により、短い距離を、より長く感じさせることが出来る。この部分だけ見ても、アスプルンド、レヴェレンツが建築を「経験するもの」と考えていた事が理解できる。
■広場
ある程度幅が抑えられたエントランスを抜けると、一面芝生に覆われた広場が姿を現す。空間の圧縮と膨張の操作である。広いスペースの前に狭いスペースを置く事によって、広さをより体感できるように考えられているのだろう。この緑の景色に圧倒されながら、脇にある細い石畳の道を歩いていく。左側には、小さな墓地、聖十字礼拝堂があり、右側に緑の芝生が広がるという構成。正面に巨大な十字架を見ながら、訪問者は歩いていく事になる。
■聖十字礼拝堂
聖十字礼拝堂内には、二つの礼拝堂があり、そこを利用する人々のための待合所のようなスペースが用意されている。この部屋は、天井高が低く設定されており、開口部は、十字架のある、広大な芝生の広場に開かれるのではなく、小さな中庭に向けて開かれている。この二つの操作により、待合室は、より親密な、プライベートな雰囲気の空間となっている。中庭部分には、小さな花や緑がこじんまりと植えられており、外の広さと対称的。室内のベンチのデザインも興味深い。壁面の仕上げ材が湾曲してベンチになるようにデザインされている。
■森の礼拝堂
聖十字礼拝堂よりさらに奥に進み、木々の間を進んでいくと森の礼拝堂がある。前の礼拝堂と比べてもこじんまりとしていて、森の中に静かに佇んでいるという印象を受ける。外壁の素材にも木が多用されており、周囲の環境にもフィットしているように感じる。内部は、鍵がかかっていて見ることは出来なかった。
■復活の礼拝堂
復活の礼拝堂までの道のりは、ひたすら長い直線の道で演出されている。道の両側に植えられた木々は高く、道の細さ長さを強調しているように感じられる。この直線の道を歩いていくと、正面に古典を想起させるオーダーを配置したエントランスが見えてくる。その他にも、部分部分に古典を感じさせる要素がちりばめられている。建物の、左側には同じくレヴェレンツが手がけた小さな待合所がある。こちらはレンガを積んだシンプルな建物で古典的な感じではない。また、この建物の立面、平面、断面には、黄金矩形等の古典的な比例関係が当てはめられている事が明らかになっている。
※1 ヨーロッパ建築案内3、p234
※2 シーグルド・レヴェレンツの建築に関する研究
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