特集”ミラー&マランタ”、ミラー&マランタのインターン伊藤達信によるコラム”ミラー&マランタの建築”

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特集”ミラー&マランタ”、ミラー&マランタのインターン伊藤達信によるコラム”ミラー&マランタの建築”

architecture, feature

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ミラー&マランタ事務所の風景
photo(C)伊藤達信

ミラー&マランタの建築

text by 伊藤達信

 1年間事務所にいて感じたことをこの場を借りて少し書いてみたい。事務所の雰囲気はとてもアットホームで、毎日朝食をみんなでとるし、定期的に事務所主催のパーティーもある。このような労働環境がもたらす雰囲気は実際とても大事で、その普段の生活を大切にする姿勢は、設計にもつながっているように思う。

 設計の進め方については、まず敷地の特徴をできるだけ正確に読みこんで、どのようにボリュームを置くかということが議論の中心になる。そのときに特徴的なのは、今ある状況をできるだけ肯定的に捉えて、その特徴をプログラムや時代背景に応じて少しだけ変えることで、建物にキャラクターを与えることである。このようにして作られたものは、周りのものと強く関係して建つことになって、よりその場所に対する理解を深めるようなものとなる。


 事務所で働き始めて驚いたことのひとつに、設計の際に参照するものの幅広さがある。時にはそれが有名な建築家のものではなくて、小さな山小屋だったりもする。このようなところにも彼らの建築に対する姿勢が垣間見えて、周りから突出したものを作るのではなくて、何気なくそこに建っているものを作ろうとしているように感じる。そのことに関しては以前聴いた講演がすごく印象的で、コルビュジェのサヴォア邸と、スイスでも無名なオーストリアモダニズムの建築家、ルイス・ヴェルツェンバッハの住宅を比較して、コルビュジェのようにマニフェストを明確に打ち出していくヒロイックな建築よりも、そういったものに影響を受けながらもその場所の特徴に応じて少しねじ曲がったかたちで建っているものの方に興味があると言っていて、これは彼らの建築に対する考え方を物語っているように思う。
 スイス建築というと多くの人が思い浮かべるのが素材に対する敏感さだと思うけれど、 それはこの事務所においても例外ではない。ボリュームを検討する段階から素材のスタディも同時に始めて、ときにはそれが設計を進める上で決定的な影響をもたらすこともある。また、事務所の作品で特徴的なのが窓枠で、普通とは少し異なるプロポーションを持っていることで、空間の中で大きな存在感を示している。全体的に受ける印象としては、ものとしての建築に対する意識が高く、その結果としてコンセプトとディテールが強く結びついて、時にはディテールの変更によってプランが変わることもある。このようにして建物を実際に建てる上でどうしても必要となるさまざまな要素を、 ただ抽象化しようとするのではなくて、それらを再解釈した上で空間の中で重要なものに転換させていくその姿勢にはとても学ぶことが多い。
 これまで事務所にいて強く感じるのは、むやみに新しいものとかオリジナルなものを目指すのではなくて、既に今まで作られてきた自分たちがいいと思うものを時代や周辺環境を尊重しながら少しだけ変えることで建築を作っていこうとしていることである。そうやってできあがったものは、一目見ただけではそれほど大きなインパクトのあるものではなくて、アイデアやコンセプトという意味ではそれほどの力強さはないかもしれない。ただ一方で微妙な違いにとても敏感で、細かい操作が積み重なって結果的に独特の空間を成り立たせている。こうした姿勢はなかなかすぐに理解することが難しい部分もあるけれど、簡単にはぶれないしなやかさを持っているように思う。


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