SHARE 三井嶺建築設計事務所による、既存の意匠を継承しつつ、装飾性も備えた鋳鉄製門型フレームで耐震補強も行っている「日本橋旧テーラー堀屋改修」
竣工写真:©Jérémie SOUTEYRAT その他の写真:三井嶺建築設計事務所
三井嶺建築設計事務所が設計した、既存の意匠を継承しつつ、装飾性も備えた鋳鉄製門型フレームで耐震補強も行っている「日本橋旧テーラー堀屋改修」です。
今も日本橋に残る「看板建築」の原状回復および耐震改修の計画である。
施主の要望はシンプルで、看板建築の姿を保つこと、耐震補強を行うことの2点であった。
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■ダクタイル鋳鉄製の門型フレームの設置風景
以下、建築家によるテキストです。
今も日本橋に残る「看板建築」の原状回復および耐震改修の計画である。
施主の要望はシンプルで、看板建築の姿を保つこと、耐震補強を行うことの2点であった。
昭和2年築、関東大震災の後に建てられた既存建物は90年近い時を経て老朽化が著しく、相談を受け一見した際は解体しかないと思えたが、なんとかして残したいという施主の要望は強く、曳屋の技術をもって揚屋を行い基礎・土台を一新することにした。
店舗部分である1階には、間口方向の耐力要素は無いといってよい状態であった。一般的な耐震補強では、1階は壁だらけになってしまい、間口いっぱいの開口をもつ原状の姿を保つことは困難である。
そこで、ダクタイル鋳鉄製の門型フレームを用いることで、間口方向の”抜け”を損なうことなく耐震補強を行うこととした。 既存の木造軸組の質感・スケールにあわせるには、ぴかぴかで無骨なラーメンフレームではなく、荒々しくも柔らかな質感をもつ鋳造による装飾的なフレームがふさわしいと考えた。鋳造であるため応力に合わせた自由な造形が可能であり、構造的にも無駄のない計画となっている。
3Dパラメトリックツールを活用した構造計算により極限まで細くしているため、鋳物でありながら重々しさはなく、軽やかでありながら薄っぺらではない、「ざらっとした透明感」とでも表現すべき、今までに味わったことのない空間が出来上がったと考えている。
上階の住居スペースは、一般的な耐震補強を施し、特徴的な小屋組を活かしたセオリーどおりのリノベーションを行った。
■建築概要
作品名:日本橋旧テーラー堀屋改修
設計:三井嶺建築設計事務所
所在地:東京都中央区日本橋本町
英文作品名 Renovation of “Kanban-Style” building, Nihombashi
architects:英文事務所名 REI MITSUI ARCHITECTS
設計:建築 三井嶺建築設計事務所
構造 江村哲哉
3Dパラメトリックプログラミング 大野友資(Domino Architects)
敷地面積:330m2
建築面積:66.5m2
延床面積:170.4m2
階数:地上2階+小屋裏
用途:テナント、住宅
構造:木造 一部ダクタイル鋳鉄による耐震補強
工期:2015年8月〜2016年2月
写真クレジット:photo by Jérémie SOUTEYRAT