長坂常 / スキーマ建築計画による、群馬の和菓子店「なか又(前橋デザインプロジェクト)」

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長坂常 / スキーマ建築計画による、群馬の和菓子店「なか又(前橋デザインプロジェクト)」

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all photos©木暮伸也

長坂常 / スキーマ建築計画が設計した、群馬の和菓子店「なか又(前橋デザインプロジェクト)」です。前橋デザインプロジェクトのウェブサイトはこちら。

そもそもこの町の将来を考えた時、この縮小社会でかつての「三丁目の夕日」のような時代を懐かしみ、賑わいに満ちた商店街を取り戻そうなどと考えるのは現実的ではなく、新たな時代にふさわしい商店街のあり方を考えなければならないと思った。

その時、シャッター街化の一因である、現在郊外の多くの人が集うショッピングモールを観察し、そこでこの先、どんな不満が生まれるかを考えてみた。

すでにそれは、限りなくネットの世界と同じように予想されるものがわかりやすく存在する世界である。その予定調和なショッピングのあり方は、リアルに商品を確認できる面においては優勢だが、量やスピード、また対象地域の広さにおいてはネットにはとても叶わない。また、車社会のあり方も大きく変わっている。どこにでもナビが迷わず連れて行ってくれる上、空き地も増えているのでどこにでも駐車できる。ある意味個々のインタフェースで体験の再編集が可能な時代に、ショッピングモールの優位性がそこまで高いのかという疑問はある。予定調和な体験では満足しきれない人たちの期待の受け皿になり得る街のあり方を、大げさだが、この小さな建物を計画しながら考えようと思った。

※以下の写真はクリックで拡大します

以下、建築家によるテキストです。

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なか又(前橋デザインプロジェクト)

群馬県前橋市の中央通り商店街の一角にオープンした和菓子屋「なか又」の新築計画である。もともとこの土地にはフルにその面積を利用した2階建の住居兼靴屋の建物が建っていて、左右は両隣の建物、上下はアーケードと地面で見切られ一面だけを街に表し、唯一インテリアからのみ、その奥行きを感じられるつくりとなっていた。

本計画ではそれを解体撤去し、新築で計画した。向かって左隣もほぼ同時に始まり竣工した中村竜治氏が手がけるパスタ店であり、近い将来右側の空き地も高濱史子氏の設計によってトンカツ屋のお店ができる。

もともとこの商店街は、全国各地の商店街の例に漏れず、深刻なシャッター街化が進行していた。日中でも人はまばらで、ちらほらと空き地が見えてきているところもある。その空洞化をなんとか食い止めたいという熱い思いから、前橋出身の起業家、田中仁氏の声かけによって、前橋のさまざまな人やものを繋ぐ組織「前橋まちなかエージェンシー」が結成され、いくつかのプロジェクトが同時期に立ち上がった。われわれが担当したこの「なか又」はそのひとつとなる。ただ、このシャッター街化の問題はなかなか深刻で、完成までの2年間でさらにその数が増えたように思う。

もともとの敷地面積に対して、イートインのない和菓子屋に必要な延べ床面積は極端に小さく、体積としてだいぶ余る。その余った体積をどのようにこの街の中で還元させるかが、この計画の大事な鍵となった。

そもそもこの町の将来を考えた時、この縮小社会でかつての「三丁目の夕日」のような時代を懐かしみ、賑わいに満ちた商店街を取り戻そうなどと考えるのは現実的ではなく、新たな時代にふさわしい商店街のあり方を考えなければならないと思った。

その時、シャッター街化の一因である、現在郊外の多くの人が集うショッピングモールを観察し、そこでこの先、どんな不満が生まれるかを考えてみた。

すでにそれは、限りなくネットの世界と同じように予想されるものがわかりやすく存在する世界である。その予定調和なショッピングのあり方は、リアルに商品を確認できる面においては優勢だが、量やスピード、また対象地域の広さにおいてはネットにはとても叶わない。また、車社会のあり方も大きく変わっている。どこにでもナビが迷わず連れて行ってくれる上、空き地も増えているのでどこにでも駐車できる。ある意味個々のインタフェースで体験の再編集が可能な時代に、ショッピングモールの優位性がそこまで高いのかという疑問はある。予定調和な体験では満足しきれない人たちの期待の受け皿になり得る街のあり方を、大げさだが、この小さな建物を計画しながら考えようと思った。

今すでにこのアーケードに沿って展開する時代の重なりを利用し、そのレイヤに直行するルートを与えることで街に奥行きを生み出し、表面積を増やすことで訪れる客の期待感を募らせることができると考え、縮小分の体積をその奥行き方向に利用することにした。縮小をデザインするような、この試みを通じて、すでに商店街沿いに生まれた空き地にも可能性を感じさせ、きっと今だからこそ、このアーケードに小規模な商店で参入しようと考える人たちにも希望を与えるのではないかと考えた。

前橋まちなかエージェンシーによって設けられたデザインコードとして、必ず煉瓦を屋外で使用するという条件が与えられた。そんな時、両隣の計画の進行を見ながら、設計できたのがこのプロジェクトの面白いところである。両隣に積み上がる煉瓦を想定しながら、一度は同じように積み上げ、それをふたつに分断し、それぞれのボリュームを小さくすることで、両隣との関係を意識しながらも、その間に生まれる虚の空間が豊かになるように設計を進めた。それは新築でありながら、商店街全体で見ると、減築のデザインでもある。商店街として視覚的には繋がりながらも、室内だけではなく、屋外にも奥行きを生み出す。商店街を立体化させることで、来客者の期待感を募らせる場を生もうとした。

植栽計画でも必ず緑化するというデザインコードがある。われわれは、空いた虚の部分に3本の小さな木を植え、その木の成長に合わせて煉瓦を剥がしていくことで、少しずつ土が増える状況に応じるよう計画した。それもあって煉瓦の目地をモルタルなどで埋めず、陰影と共に煉瓦のソリッドさを感じさせるようにした。それは床だけではなく、積み上げた垂直面の煉瓦も同様とし、今の煉瓦面の表情が生まれている。

■建築概要
題名:なか又(前橋デザインプロジェクト)
設計:長坂常/スキーマ建築計画
担当:坂本拓也
構造設計:TECTONICA INC.
所在地:群馬県前橋市千代田町2-7-21
主用途:和菓子屋
施工:宮下工業株式会社
協力:
前橋まちなかエージェンシー(コーディネーター)
ホシザキ東京株式会社(厨房計画)
SOLSO(植栽計画)
ニュウファニチャーワークス(什器製作)
階数:地上2階
敷地面積:108.32㎡
建築面積:33.82㎡
延床面積: 51.82㎡(1階 27.50㎡/2階 24.32㎡)
構造:鉄骨造
竣工:2018年7月
オープン:2018年8月
写真:木暮伸也


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