多田正治アトリエ+ENDO SHOJIRO DESIGNによる、京都・上京区の宿泊施設「ゲストハウス樸宿 西陣(千本上立売のコンプレックス)」です。
千本通りは京都市を南北に走る通りで、小売店が並ぶ庶民的な下町風情の残る通りである。
その千本通り面した木造2階建ての住宅を、ゲストハウス/カフェ/オーナー住宅というコンプレックス(複合施設)へとリノベーションを行った。
既存建物は幾度も増改築を経て、道路から奥に向かって並ぶ3つの建物がちぐはぐに繋げられていた。そこで、複雑な増改築のあとを解きほぐしたうえで耐震補強を加え、道路側の棟の1階部分を大きく減築し、敷地の奥へと風や光、視線が通じる外部空間(ロジ)をつくった。道路に面した建築の正面には前庭をつくり、多くの緑を配した。前庭からロジ、内庭・奥庭にかけて緑がつながり、旅行客や地元の人々が集う空間となる。ロジにあるカフェを横切り、ゲストハウスの玄関に辿りつく。奥の庭で、かつての建物で祀られていた小祠が出迎える。
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以下、建築家によるテキストです。
「ゲストハウス樸宿 西陣(千本上立売のコンプレックス)」
千本通りは京都市を南北に走る通りで、小売店が並ぶ庶民的な下町風情の残る通りである。
その千本通り面した木造2階建ての住宅を、ゲストハウス/カフェ/オーナー住宅というコンプレックス(複合施設)へとリノベーションを行った。
既存建物は幾度も増改築を経て、道路から奥に向かって並ぶ3つの建物がちぐはぐに繋げられていた。そこで、複雑な増改築のあとを解きほぐしたうえで耐震補強を加え、道路側の棟の1階部分を大きく減築し、敷地の奥へと風や光、視線が通じる外部空間(ロジ)をつくった。道路に面した建築の正面には前庭をつくり、多くの緑を配した。前庭からロジ、内庭・奥庭にかけて緑がつながり、旅行客や地元の人々が集う空間となる。ロジにあるカフェを横切り、ゲストハウスの玄関に辿りつく。奥の庭で、かつての建物で祀られていた小祠が出迎える。
中に入ると吹き抜けのあるフロント、小上りのあるラウンジの空間となっている。墨入コンクリートの床、杉皮入和紙を貼った壁面、天井は既存あらわしという照度を落とした空間で、地窓からは小祠が見え、小上がりの文庫コーナーの小窓からは千本通までが見通せる。おのおのの場所で旅行者がゆっくりとした時間を過ごせるようなしつらえである。
2階にあがると3つの客室に通じるホールに出る。既存屋根のシルエットの下にキューブや壁面を配置しており、それらが各客室となっている。
建築の内外にある、ロジ、大小キューブ、小上り、壁面、緑といった要素は街並みを想起させ、さながら街並みを散策するような空間となっている。
旅行客やカフェ客は、過剰演出された観光地よりも、その土地の日常・リアルを求めてやってくる。
まちや通りを手掛かりに構成した空間は、旅人にとっての居心地の良い日常/非日常の空間となるだろう。
■建築概要
ゲストハウス樸宿 西陣
(千本上立売のコンプレックス)
ゲストハウス(簡易宿所)
京都市上京区
設計・監理:多田正治アトリエ+ENDO SHOJIRO DESIGN
施工:ふじさき組
構造アドバイス:門藤芳樹構造設計事務所
ランドスケープ:みちくさ(小笠原哲)
設計期間:2017.07 – 2018.05
施工期間:2018.06 – 2018.1