ペーター・メルクリ講演会レポート(1)

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ペーター・メルクリ講演会レポート(1)

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2008年6月、東京国立近代美術館で、スイス人建築家ペーター・メルクリの講演会が行われた。内容はメルクリによる作品、彫刻の家とノバルティスキャンパスビジターセンターをメルクリ自身が解説するというものであった。ここではメルクリの講演の様子をレポートする。なお、このレポートは、許可をとって取材・撮影をしたが、文責はサイト運営者側にあり、その内容に関して、メルクリおよび美術館は関知していない事をご了承下さい。


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はじめに
「今日、保坂さんは私にノバルティスの最近の作品について紹介するように言われたのですが、私としては二つの作品について紹介したいと思いました。ひとつは88歳になるヨゼフソンに頼まれてつくった、スイスの南側のジョルニコにある美術館。もうひとつの方はその約10年後につくったノバルティスの作品。その約10年間の違いを紹介します」
まず、メルクリは彫刻家ハンス・ヨゼフソンの作品を収める美術館”彫刻の家”について解説した。メルクリはヨゼフソンの彫刻作品を解説し建物が建つランドスケープ・建物の形態について解説していった。
ヨゼフソンの彫刻の解説
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「最初の作品はヨゼフソンの作品で1953年につくられた1.5m角の作品で、韓国の戦争・第三次世界大戦を危惧して作った作品です。下の方にあるのが、上からものが落ちてきたりする様子、真中にあるのは家のようなものであったりします。」
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「その30年後に作られた作品です。流動的な塑形的なものになっていて、女性と男性がいると女性はベッドに座っているという作品です。」
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「彼の75歳の時の作品で半身像です。最初はモデルで作り始めて段々モデルから自由になっていって独立性が帯びてきています。」
敷地と建物の関係・配置について
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「一番上のほうに走っているのが線路です。真ん中のところが川です。そこに挟まれた長い建物で細長いです。」
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「この建物はシンプルだと思います。長さは約42mあって、幅約4.6m、ヨゼフソンの二つの種類の作品を入れるミュージアムです。入口がまずアシンメトリー、中央にありません。三つの部屋を通ってつきあたりを右に曲がって小さな部屋がならんでいて、そこをバックしてもとに戻ってくるという動線計画が特徴となっています。(建物の)左側に村があります。村から一番遠いところに入口があります。もし、スーパーマーケットであれば、村に一番近い場所に入口をつくるだろうと思います。
シンメトリーになっておらず、建物中央に入口がありません。それはランドスケープから来ています。上の方に広場があって、反対側に川がある。その関係の中で二つのアシンメトリーで別れた二つ部屋がそれぞれ違って場所があるというのが特徴的になっています。」
断面の特徴
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「セクションに関して、ノバルティスにも関係してくるのですけれども、三つの高さがあります。それは、そこに収められる作品とも呼応していて、外部のランドスケープとも関係してきています。三つの空間は光の入り方と関連しています。光は上からはいってくるのですが、光は(ハイサイド・ライトが)スモークの素材でできているために直接はいってくるのではなく、全体が明るくなるようになっています。そして、重要なのは電気がないので、(自然の)光だけがこの場所にあるということです。普通の美術館ですと光の調光のためのハイテクな高度なものがあるけどここにはありません。」
建物外部の目地について
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「最初にプロポーションを大切にしています。左から追って行って切り替わりのところに半端がきています。コンクリートの型枠の半端をどう扱うか。(ヴォリュームに)ちょっと段差がある。プロポーションの問題を重要視しています。
これを決めるのに非常に時間をかけて、たくさんの時間を使いました。また、たくさんのスケッチを描いて決めていきました。」
コンクリートの質感について
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「このようなディテールをごらんいただきますと、いしずみ(コンクリート目地のレイアウト)が意図的に歪になっています。(画面に)鉄のパーツが見えていますけども、これでコンクリートをつなぎとめています。スイスの建築家の大きな傾向として、コンクリートを使うならパーフェクトとして使いたい。いわば人工物的な仕上げを求める傾向があります。私はそうではなくコンクリートというマテリアルを石と同じように扱うべきではないか。官能的な要素を引き出していく。パーフェクトさを追求していくようなやり方でない扱い方が良いのではないか。(このような方法が)パーフェクトに作るよりも官能性を引き出すことができるのではないか。しかし他方ではコンセプトそのものについて非常にパワフルなものを出さなければいけない。それをもってして始めてこのような(コンクリートの)表現が可能になるのだと思います。そしてもうひとつ注目しなければいけないのはこのつなぎ目の所です。隙間に微妙なバランスを取っていくのが大事です。そして、雨水が隙間に浸透していって灰色になっていく。そういった要素も計算の中に入れていかなければならないと思います。」
外観について
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「外の様子ですけども、今御覧にいただいたように平面図はかなりシンプルに見えます。しかし、私がいつも教え子たちに主張しているのは、こういった一見シンプルな平面図と付属物の様相をうまく使い込んでいくことによって、また外の景観等をすべて計算に入れていく事によって、(建物に)実に多種多様な顔を持たせることができる。そういった理念をもっています。この建物は非常にシンプルだが非常に多面的な顔を持っています。」
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「真中に、ヴォリューム・立体形の組み合わせ方によってさまざまな面白みをだすような構築を考えています。右手に突き出ているのがアネックス。左手が川になります。」
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「このようにして計算して、プロポーション・ヴォリューム・また官能的な要素をうまく働かせることができたのではないか。と思います。そして、この建物は安上がりでできています。重要なのは、私が学生に言っていますのは、建築家の生業に愛があるならば、プログラムは横に置いておいて、マテリアルの中から育たたれていくものを発揮して、必要な力を引き出すことができるのではないか。そういうことを追求していくことができるのではないかと主張しているのです。」
建物内部について
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「第一室ですが、1950年頃の抽象的なレリーフ作品が展示されています。この(部屋の)型枠については職人に自由にやっていいと伝えました。私としてはこのような”すじ”は好みではありません。予算的に問題なければシックイ仕上げとしたかったのですが。ここでは外壁と違って意図的にデザインするのをやめました。ですので、展示室の中の”すじ”が非常に自由奔放であるということにお気づきになると思います。線ですとか要素などが偶然性の産物というものとなっています。」
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「こちらの展示室ですが非常に天井が高い事が大きな特徴ではないかと思います。このように台座を設けましてその上に半身像をおいています。そしてもうひとつ、(彫刻の)右側を3m程度とっています。これが建物の縦方向の最後の地点・行き詰まりということになります。ここのところで天井高が高い展示室を設けたわけですけれども、非常に幅が狭いということ導線ということを考えますと、ここでもう一回Uターンをして戻っていくというのは無理があるのではないかと思いました。そこでここで右側に見えているようなキャビネットを4つ設けることにしまして、導線としては90度直角に曲がってそしてキャビネットに向かわせるということを考えました。」
アネックス(キャビネット)について
「展示室におきましては、ごく通常の長方形型のものになっていますけれども、そこにおける立体作品というのは、いずれも画面左側に寄せて展示するという見せ方をしています。」
「これが、今申し上げましたキャビネットの中身です。(展示されている彫刻のモチーフは)恋人たち。男と女です。」
>>ペーター・メルクリ講演会レポート(2)へ


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