展覧会レポート”DEROLL Commissions Series2:日本史”

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展覧会レポート”DEROLL Commissions Series2:日本史”

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2008年10月28日~11月3日の期間、スペース・インタートで"DEROLL Commissions Series2:日本史"展が行われた。この展覧会は岡田栄造の企画により開かれ、デザイナー清水久和による作品"髷貯金箱"と"井伊直弼[大]"が発表された。
この二つの作品は、見る者に驚きや戸惑いを与える不思議な存在感を持った作品であった。


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髷貯金箱
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髷貯金箱のディテール。貯金箱であることがわかる。
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井伊直弼[大]
清水久和による作品"髷貯金箱"と"井伊直弼[大]"を見たとき、この作品をどのように理解すれば良いのか非常に戸惑った。デザインの文脈から見ればよいのか、美術の文脈から見ればよいのか。非常に理解しがたい作品ではあるとこは明らかだが、解釈を拒んでいるというよりも、作品についてじっくりと深く考えることを促すような奥深さを持った作品であると感じた。
二つの作品のタイトルには、"井伊直弼"と"髷"といった日本の歴史を意識させる単語が含まれている。このタイトルをヒントに作品の解釈を試みることも可能だろう。展覧会場に掲げられた岡田栄造によるテキストにも歴史的視点からの解釈が書かれていた。しかし、ここでは、歴史的な意味からの解釈ではなく、実際に作品を見た者としてその経験から作品について考えてみたいと思う。なぜ、これらの作品はこれほどまでに、見る者に戸惑いを与えるのであろうか。髷貯金箱を取り上げ考えてみたい。
作品の周囲を歩き回り、じっくりと作品を眺めていていると、その作品のモノとしてクオリティの高さに驚かされる。非常に完成度が高い。と同時に疑問が浮かぶ。なぜ髷なのか、貯金箱なのかと。
日本史というテーマに対し髷を巨大化するという清水の答えは非常にユーモア溢れるものである。一見しただけではジョークともとられかねない。
しかし、そのユーモアのあるテーマを形とし出来上がった作品の仕上がりはきっちり管理され作られた大量生産品であるような仕上がりである。そこからは非常に真面目に作られているという印象を受ける。
また、髷と台座の関係を見てみよう。髷貯金箱の"髷"は、ある程度具象的に表現されている。色は黒で日本人の髪の色を容易に連想させるし、折り曲げられ紐で括られている様子は髷そのものである。見た瞬間に髷であると理解できた。
対して髷が置かれた台座はどうであろうか。この白く光沢感がある台座は一見しただけでは何かを表現したものとはわからない。会場に滞在していた岡田による説明を受け初めてそれが、石垣を表現したものだとわかった。白く透明感のある台座は、石垣を抽象的に表現したものなのである。
この髷と台座はひとつの作品の要素であるが、その一つの作品の中に"具象的"な髷と"抽象的"な石垣という対照的に表現されたものが同居しているのである。
前に書いたモチーフと仕上がりの関係も同じである。"ユーモア"と"真面目"といった相反するものが一つの作品の中に同居しているのだ。
髷と石垣が同じように具象的に表現されていれば、そして、より真面目さを感じさせるモチーフを選んでいたなら最初に述べた戸惑いを感じることはなかっただろう。
髷貯金箱において、作品の一貫性を避けるこの巧みな表現方法が、鑑賞者に一目見ただけでの簡単な解釈を拒み、戸惑いを与え、悩ませる原因となっているのであろう。
では、この作品は、単に鑑賞者を悩ませ、その存在について考えさせたいだけなのであろうか? 現代におけるこの作品の意味を考えた時、これらの作品は、現代のデザインや建築に対する強烈なメッセージともとることができる。
現代のデザインには、非常に分かりやすいもの、ひとつのアイデアをそのまま形にするといったものも多く見られる。それらは、デザインが大量に溢れ、雑誌やwebでデザインが消費され、一目見ただけでわからなければ相手にされることがないといった社会状況に対応しているとも言える。(もちろん、これはデザインに限ったことだけではないが。)
そのような、デザインの状況に対して、この作品は、わからなさの中にも豊かさがあることを教えているような気がする。わからないものを考えていく中で自身の中で色々な発想や考えが生み出され発展していく事もあるのである。
そう考えると、この長いテキストもこの作品によって導かれ書く事を促されたような気がしてくる。
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