「建築と今」は、2007年のサイト開設時より、常に建築の「今」に注目し続けてきたメディアarchitecturephoto®が考案したプロジェクトです。様々な分野の建築関係者の皆さんに、3つの「今」考えていることを伺いご紹介していきます。それは同時代を生きる我々にとって貴重な学びになるのは勿論、アーカイブされていく内容は歴史となりその時代性や社会性をも映す貴重な資料にもなるはずです。
長坂常(ながさか じょう)
スキーマ建築計画代表。1998年東京藝術大学卒業後にスタジオを立ち上げ、現在は北参道にオフィスを構える。家具から建築、そして町づくりまでスケールも様々、そしてジャンルも幅広く、住宅からカフェ、ショップ、ホテル、銭湯などなどを手掛ける。どのサイズにおいても1/1を意識し、素材から探求し設計を行い、国内外で活動の場を広げる。日常にあるもの、既存の環境のなかから新しい視点や価値観を見出し「引き算」「誤用」「知の更新」「見えない開発」「半建築」など独特な考え方を提示し、独自の建築家像を打ち立てる。
代表作Sayama Flat /HANARE / FLATTABLE/ ColoRing / BLUEBOTTLE COFFEE /桑原商店/お米や/ DESCENTE BLANC / HAY /東京都現代美術館サイン什器・家具など
URL:http://schemata.jp/
今、手掛けている「仕事」を通して考えていることを教えてください。
「見えない開発」
韓国チェジュ島のタプトンという昔栄え、今はだいぶ下火になっていたエリアに D&DEPARTMENTやFreitag、creamなどARARIO museumを中心とした施設の、一棟一棟を改修している時のこと。
このまとまったエリアの計画は、いわゆる開発にあたるのだろうが、印象として“ズレ”を感じ、そのずれを埋める言葉を模索した時に思いついた言葉が、この「見えない開発」でした。
いわゆる六本木などの開発は、新旧の明快な境界が出ますが、このチェジュでの開発は外観ではさほど変化がなく、中に入らないと変化に気づきにくい。
そして境界が曖昧な分、どこまで続いているのかわかりにくく、不鮮明でその見えない境界の先に期待が生まれる。
その期待の目が街を育てると思っています。
引き続きそのエリアの開発に関わらせてもらっていますが、計画前には歩いている人もまばらだったあの街が、どう変わるのか楽しみです。
春には一部完成し、営業を開始しながらもコロナの影響で見に行くことができていないので、早く行きたいと思っています。
そして、それに近い計画が札幌でも始まろうとしています。見えない開発_札幌編。