


中村亮太 / アトリエ・トルカが設計した、茨城の「茨城町の家」です。
新興住宅地での計画です。建築家は、場所固有の物語のない環境に対し、生活の内側に“日常の中に埋め込まれた外部”を持込む建築を志向しました。そして、反復する平面構成としつつ天井高や開口を変化させ“反復した空間の質を異なるもの”にしています。
水戸市近郊の新興住宅地に建つ家族4人のための住宅。
計画地は私が生まれ育った地域であり、クライアントは学生時代からの友人にあたる。マイルドヤンキー的な生活様式が根付いたこの場所では、ある種の閉じたコミュニティの中で、ゆったりと安定した生活が送れる一方、気が付けば外部と接続する機会が少なくなっていく。私もそうして育ってきた。
加えて、近年整備された新興住宅地や団地にはその場所固有の物語が存在しない。かつて地域に根付いた共同体には、祭りや神話、土地固有の物語があった。それらは時々現れる日常の中に埋め込まれた外部としての機能があったはずだが、この地域でそのような出来事を感じることは難しい。
この建築で試みたのは、日常生活の内側に外部を持ち込むことである。
トリックスターのようにこのまちの物語に入り込んだ他者として、絶えず意味を問い直し、生活を動かし続ける存在としてこの建築を計画した。具体的には、同じようなプランを反復するという、きわめて単純な平面構成を採用している。しかし、その平面の単純さに対し、天井高や開口を変えることで反復した空間の質を異なるものとしている。
ホール→廊下→広間といった同様のシークエンスをたどりながら、体験される空間は全く異なる。搭状のホールは次の空間に向かうための閾を空間化したものであり、閾を経由して体験される日常の反復の中に、少し違う何かが潜んでいる。外部は遠くにあるのではなく、いつもすぐ近くにある。
リビング・ダイニングに相当する広間1とは対照的に、機能の定まっていない広間2はこども達の成長と共に異なる性格を帯びる。
家族は時間の流れに応じて居場所や使い方を変更し続ける。安定した生活の心地よさと、能動的に生活を更新していく楽しみの共存。何より、異質なものと共に暮らすこと自体が、生活を動かす動力になることを期待している。外観は、周辺の住宅と同様にサイディング等の既製の建材で構成しており、3本の塔と曲面屋根だけが、均質なまちなみに対して小さな異物として立ち上がる。これは内部で考えたことの外部におけるあらわれでもある。








