小林玲子 / kitokino architectureと野海彩樹建築設計舎が設計した、愛知の「安城の住宅」です。
郊外の住宅街に計画されました。建築家は、敷地内で完結しない住居を目指して、周囲のスケールと連続し隣接する畑に開く“屋根”や風景を内部に取り込む“窪み”を考案しました。そして、見慣れた景色の魅力発見の契機となる事も目指しました。
敷地は郊外の住宅地。夫婦2人+子供3人のための住宅である。
さほど広くない敷地であるため、外部との連続性や関係性に配慮することで、敷地内で完結しない住まいとなることを目指した。
敷地の周囲には低層住宅と田畑、北側には3階建ての集合住宅がある。屋根の高さは、まちのスケール感に合わせて北東の道路側で高く設定し、隣地戸建住宅への圧迫感がないように南西に向かって下げていく。結果として、南東に広がる田畑へ伸びやかに開くような屋根の形状となった。
この住まいは、耐震等級3同等の耐震壁を要し、かつ、低炭素認定住宅を取得するために、開口部の量、大きさは限定されている。そこで、外形を窪ませ、「窪み(くぼみ)」の部分に開口部を設けることで、印象的に外部を引き込む形状とする。
「窪み」により室内に景色や風が引き込まることで、部分的に外部に近い場所が生まれ、内部を東西に移動する際に気分を切り替えるスペースとして機能する。結果、外から見た佇まいとしては、「窪み」がボリュームを分節する役割を果たし、南面ではスケール感をやわらげ、北面では緑道の背景にリズムを与える。
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以下、建築家によるテキストです。
安城の家・緑道・畑
敷地は郊外の住宅地。夫婦2人+子供3人のための住宅である。
さほど広くない敷地であるため、外部との連続性や関係性に配慮することで、敷地内で完結しない住まいとなることを目指した。
屋根の高さによる周辺環境との連続性
敷地の周囲には低層住宅と田畑、北側には3階建ての集合住宅がある。屋根の高さは、まちのスケール感に合わせて北東の道路側で高く設定し、隣地戸建住宅への圧迫感がないように南西に向かって下げていく。結果として、南東に広がる田畑へ伸びやかに開くような屋根の形状となった。
屋根の架構は、折れ線(谷)を対角に設け、勾配の異なる2組の垂木からなる「挟み垂木」とした。「挟み垂木」を棟木に沿ってずらすという操作のみで屋根を構成できるため、HPシェル構造などの複雑な形状を用いなくてよく、垂木の長さを流通材規格サイズの6mに抑えることができることもあり、コスト面でのメリットも生まれた。
緑道・畑との連続性
この街には、暗渠となった水路上に公共緑道が1本、断続的に通っている。この住まいはその緑道に接して建ち、市との協議の結果、手入れの行き届いていない緑道部分を今回工事と併せて整備し、近隣の方が楽しめる緑地として提供することとなった。
北側の外壁は反射性のある板金で仕上げ、緑地のよき背景となるように計画した。住宅にしては高さのある外壁は、木々が将来大きくなったときも、そのよき背景となり続けるだろう。
また、南側の畑に対しては、持主と施主とが良好な関係であるため、あえて塀などは設けなかった。施主も菜園を趣味とするため、菜園を通じて近隣住民とのコミュニケーションが生まれるように意図した。
ボリュームの分節による外部環境の引き込み
この住まいは、耐震等級3同等の耐震壁を要し、かつ、低炭素認定住宅を取得するために、開口部の量、大きさは限定されている。そこで、外形を窪ませ、「窪み(くぼみ)」の部分に開口部を設けることで、印象的に外部を引き込む形状とする。
「窪み」により室内に景色や風が引き込まることで、部分的に外部に近い場所が生まれ、内部を東西に移動する際に気分を切り替えるスペースとして機能する。結果、外から見た佇まいとしては、「窪み」がボリュームを分節する役割を果たし、南面ではスケール感をやわらげ、北面では緑道の背景にリズムを与える。
室内に風景を取り込むことだけでなく、まちの景色の背景として住宅を捉え直すことで、田畑や緑道などの、そのまちにある見慣れた景色の魅力に気づかせるきっかけとなることを目指した。
■建築概要
所在地:愛知県安城市
主要用途:専用住宅
家族構成:夫婦2人+子3人
構造:木造在来工法
規模:地上2階
設計:kitokino architecture+noumi 担当/小林玲子、野海彩樹
構造計画:KMC 蒲池健
施工:株式会社 箱屋
造園:Eda 堀口真吾
用途地域:第一種住居地域
敷地面積:138.70㎡
建築面積:83.22㎡
延床面積:146.25㎡(容積率105.4%)
竣工年月:2022年2月
写真:Ookura hideki / Kurome Photo Studio