SHARE 大阪・関西万博の、若手建築家が設計を手掛ける全20施設のパース画像とコンセプト(後編)。後編では、サテライトスタジオ・トイレの10施設を紹介
大阪・関西万博の、若手建築家が設計を手掛ける全20施設のパース画像とコンセプトを掲載します。後編では、「サテライトスタジオ」「トイレ」の10施設を紹介します。前編はこちらからどうぞ。
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は、若手建築家による2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)会場内の「休憩所」「ギャラリー※1」「展示施設※2」「ポップアップステージ※3」「サテライトスタジオ※4」「トイレ」計20施設の設計業務が完了しましたので、各施設概要、設計コンセプト及びイメージパースを公開します。
20施設の公募については、1970年開催の日本万国博覧会(大阪万博)を担当した若手建築家が、その後著名な建築家となったように、大阪・関西万博においても若い世代の活躍、飛躍のきっかけとなるよう、将来が期待される若手建築家を対象に行ったものです。
「多様でありながら、ひとつ」という会場デザインコンセプトの下、SDGs(持続可能な開発目標)達成につながる、意欲的かつ大胆な提案により、会場内に個性豊かで魅力的な博覧会施設を創出していきます。
※1・・・アート、アニメ、ファッション等の催事、各種展示会、フォーラム等の開催を想定した施設。
※2・・・「未来の暮らし(食・文化・ヘルスケア)」が体験できる『フューチャーライフエクスペリエンス)』と、「未来への行動」が体験できる『TEAM EXPOパビリオン』で行われる事業について、それぞれ発表・展示を想定した施設。
※3・・・音楽、トークイベント、お祭り等のイベント実施を想定した小規模ステージ広場。
※4・・・放送局の番組中継・収録用スタジオ。
以下、各施設のパース画像とコンセプト掲載します。
野中あつみ+三谷裕樹による「サテライトスタジオ(東)」
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施設名:サテライトスタジオ(東)
施設概要
設計者:野中 あつみ+三谷 裕樹 | 株式会社ナノメートルアーキテクチャー一級建築士事務所
主用途:放送用スタジオ
階数:平屋建
延床面積:248.08㎡
構造:木造設計コンセプト
私たちは一般的な建材を扱う合理性を捨て、規格も入手ルートも不鮮明な非合理的な手法で建築をつくります。そんな先の思いやられる設計の足掛かりとなるのは、その木がどのような由来=ストーリー性を持つかということです。
合理的かつハードの側面に価値が見出されがちな木材を非合理的かつソフトの側面に価値を見出し、従来の建築とは真逆のプロセスで建築をつくるのです。ここに集まるのは個性的なバックボーンを持つ、形は歪で土やコケやフジツボ(!?)がついているような、実に厄介で愛らしい木たちです。
そんな木たちを主役に据えることで、木たちを、ひいては建築そのものをストーリー性という新たな視点で批評できる価値観を養うことが私たちの挑戦です。
佐藤研吾による「サテライトスタジオ(西)」
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施設名:サテライトスタジオ(西)
施設概要
設計者:佐藤 研吾 | 佐藤研吾建築設計事務所
主用途:放送用スタジオ
階数:平屋建
延床面積:144.08㎡
構造:木造設計コンセプト
サテライトスタジオは、会場内のウォーターワールド沿いに建つテレビ局のスタジオとして使われる施設です。海を眺めることができる大きなガラス窓があり、その窓の正面には小さな広場を設け、訪れた人々の居場所を作ることにも配慮しています。この施設は福島県産材を用いた木造の建築で、基礎も含む大部分の部品が再利用可能で、万博会期後には再び福島県に移築し、地域の拠点施設となる予定です。
井上岳+齋藤直紀+中井由梨+棗田久美子による「トイレ1」
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施設名:トイレ1
施設概要
設計者:井上 岳+齋藤 直紀+中井 由梨+棗田 久美子 | GROUP
主用途:トイレ
階数:平屋建
延床面積:81.27㎡
構造:鉄骨造設計コンセプト
万博前の夢洲には、植物や鳥類が棲みつき独自の生態系がつくられていました。そして、夢洲は万博やIRによる利用が決まり、更地になりました。本計画では万博期間中に人間が立ち入れない、夢洲につくられていた生態系がアーカイブされた「夢洲の庭」をつくります。利用者は入口から各個室に入り、出口から出ると、アーカイブされた夢洲の生態系を一望できます。この「夢洲の庭」は万博会場の中で、夢洲の過去現在未来に思いを馳せ、自然と人間の共生のあり方を再考できる場となります。
小林広美+大野宏+竹村優里佳による「トイレ2」
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施設名:トイレ2
施設概要
設計者:小林 広美+大野 宏+竹村 優里佳 | Studio mikke 一級建築士事務所+Studio on_site+Yurica Design and Architecture
主用途:トイレ
階数:平屋建
延床面積:60.54㎡
構造:鉄骨造 一部 木造設計コンセプト
-いのちをもつ庭-
地球の中で数百年もの時間をかけて固まった花崗岩を、400年程前の人々が大坂城再建のために切り出し、その幾つかが利用されず、切り出した地に残されました。現代、これらの石は大坂城に運ばれなかったことで残念石と呼ばれています。本計画では、長い時を経て自然の力・人の手によってつくられた石を人間と同じように「いのちある存在」として建築に取り込み、いのちをもつ建築・庭をつくります。
建築になった際に生まれる場では、残念石と人間の距離はこれまでよりも少し近いものとなり存在感、表情、手触り、温度など長い時間をかけて紡がれた唯一無二の生命としての力強さが感じられます。同時に400年もの前の人の痕跡が残っており、人間の力強さを感じることができます。デジタル技術を利用し石を傷つけることなく、時の記憶を持つそのままの姿で建築に取り込みます。石と大屋根によって生まれる空間は、自然と人のいのちを感じる場となります。
世界が一同に介する場で、歴史的な石を現代の建築の中に存在させ、価値を伝えていくきっかけとなることも願っています。
*今回使わせていただく残念石は 1620年頃に大野山から切り出され、木津川にストックされていましたが、その後の人々が川の堤防代わりに土留として利用されていたものが 1975 年に発見されました。切り出された位置から何度か動かされ、現在はまたバイパス工事のために多くの残念石が別の場所に移動途中です。大野山付近にて、400年前の人々が石に残した印が見えるような形でご覧になれますので是非足を運んでみてください。
小俣裕亮による「トイレ3」
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施設名:トイレ3
施設概要
設計者:小俣 裕亮 | 小俣裕亮建築設計事務所一級建築士事務所 new building office
主用途:トイレ
階数:平屋建
延床面積:249.97㎡
構造:木造 一部 空気膜構造設計コンセプト
空気を入れてふくらませる風船のような屋根をもった建築です。
屋根を透過した柔らかい日差しが空間を明るく照らし、屋根自体も風速に応じて風量を変えることで形を変化させながら維持コストを抑えるとともに、気温に応じて膜屋根上部に水を溜めて冷却する仕組みをもった膜屋根を計画しました。
1970年の大阪万博で様々な実験がなされた空気膜構造を引き継ぎアップデートすることで、環境レスポンシブな構造をつくります。
浜田晶則による「トイレ4」
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施設名:トイレ4
施設概要
設計者:浜田 晶則 | 株式会社浜田晶則建築設計事務所 AHA 一級建築士事務所
主用途:トイレ
階数:平屋建
延床面積:138.63㎡
構造:木造設計コンセプト
人、植物、そして環境を土の壁でつなぐ、峡谷のような建築をつくります。自然界の形から抽出した有機的な形態の壁を大型の3Dプリンターで各地域の土地からとれる土を出力し、外壁やランドスケープを構成します。それらを依り代として人々が集まり、自然との共生や循環について考え休息する、現代の人間の巣のような建築像と社会を提示します。
米澤隆による「トイレ5」
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施設名:トイレ5
施設概要
設計者:米澤 隆 | 米澤隆建築設計事務所
主用途:トイレ
階数:平屋建
延床面積:246.04㎡
構造:鉄骨造設計コンセプト
本計画では、1970 年の大阪万博にて終焉を迎えたと言われている、建築の「生命性」について思考した建築思想「メタボリズム」を、55 年の時を経てアップデートし、再びこの大阪の地にリバイバルさせます。積み木のようにユニットを積み重ねることで建築を構築する仕組みにより、閉会後はユニット単位に解体し、公園や広場などに移設し、その場に必要な数や形に組み換えることができる計画です。また、カラフルなユニットを緩く連帯させながら共存させることで、会場デザインコンセプトである「多様でありながら、ひとつ」をデザインします。
隈翔平+エルサ・エスコベドによる「トイレ6」
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施設名:トイレ6
施設概要
設計者:隈 翔平 + エルサ・エスコベド | KUMA&ELSA
主用途:トイレ
階数:平屋建
延床面積:288.98㎡
構造:木造設計コンセプト
空から雨水が落ちて、蒸発し、雲となり、また雨になる。あるいは、溜まった雨水を人が利用して排水管へと吸い込まれていく。水が循環するそのプロセスの中に、水と人の多様な出会いをつくり、人々は水にまつわる現象を体感します。また、丘のような屋根上をすこし登ると、「静けさの森」を見渡すことができます。視線は自然と水の流れる方向を向き、その先には水によって生かされている森の風景が広がっています。
鈴木淳平+村部塁+溝端友輔による「トイレ7」
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施設名:トイレ7
施設概要
設計者:鈴木 淳平+村部 塁+溝端 友輔 | HIGASHIYAMA STUDIO+farm+株式会社 NOD
主用途:トイレ
階数:平屋建
延床面積:95.46㎡
構造:鉄骨造設計コンセプト
3Dプリントされた樹脂パネルによってつくられる建築です。外周を湾曲したパネルで覆うことで、周辺の風景や光を不規則に反射させ、蜃気楼のように景色を映し込むことで広場に溶け込むような建築となります。同時にパネルは光を透過させることで、内部を光に満ちた空間にします。
パビリオンのような強い象徴性を示す存在ではなく、人や自然環境が寄り添うことで表情が変わるような建築を目指します。会期後、樹脂パネルは粉砕・再加工され、形を変えながら様々な場面で使われることを想定しています。
斎藤信吾+根本友樹+田代夢々による「トイレ8」
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施設名:トイレ8
施設概要
設計者:斎藤 信吾+根本 友樹+田代 夢々 | 斎藤信吾建築設計事務所+Ateliers Mumu Tashiro
主用途:トイレ
階数:平屋建
延床面積:56.19㎡
構造:木造 一部 鉄骨造設計コンセプト
今を生きる人々は、様々な文化や国籍にルーツがあり、統一された言語はなく、宗教も異なり、体格や身体能力もバラエティーに富み、「こころ」と「からだ」の性や個性も多様化しています。これからは、従来の標準とされた「人間」をモデルに作られた「建築計画」を一度解体し、現代におけるあたらしい「かた」(typology)から建築を考える必要があるのではないでしょうか。万博のトイレの計画では、視覚・聴覚障がい・車椅子利用者とのワークショップを行い、「こころとからだの性の多様性」にも呼応しなが
ら、様々な国籍や宗教にも配慮した計画を行いました。個性ある異なるもの同士の総体が、へだたりながらもひとつながりの群となる風景を目指します。