SHARE StudioGreenBlueによる”キリのキョリのイエ”
StudioGreenBlueによる埼玉県鴻巣市の住宅”キリのキョリのイエ”です。
以下、建築家によるテキストです。
敷地は、8つに分譲された土地の中央に位置し、8住戸だけが利用する行き止まりの車道に接している。分譲地におけるこのような車道は、各住戸の共有の広場として使われ、家族間の情報交換や子供たちの遊び場となる。しかし、多くの分譲地では、このような道路に対して閉ざした印象となることが多い。
クライアントの要望は「家族の気配が分かるワンルーム的な空間」および「同時期に集まる同世代家族との触れ合いやすい環境」であった。
そのため、私たちは明るい存在感のある家を設計することを考えた。それは室内で使う明かりをみんなが利用する道路まで引き延ばし、街を明るくする事でもあった。
まず、敷地が接する道路いっぱいに子供たちが遊べる広場をつくり、三輪車でも容易に入れるようにした。そして、その広場を昼夜共に明るい印象とするために継ぎ目のない大きな窓を設けた。
この家を道路に開きながらワンルーム的な空間にするには、「道路からの距離」も、「室内での距離」も、物理的な距離が近いと感じた。 そこで霧の中で感じる『距離感』に着目し、その『距離感』を引き延ばすことを考えた。
それは、元のイメージに別のイメージを重ねて足していくことで、元のイメージを柔らかく消し、距離感をつくる方法である。
具体的には、「元のイメージ」を「外に見える景色」とすると、そこに「壁の配置」や「壁の高さ」、「床の高低差」を利用して、「元のイメージ」に「それらのイメージ」を重ね足していくことである。
個室は、パンチングを数枚重ね足し、元のイメージを全体的に消して行くことで、より距離感をつくるようにした。重なったパンチングはモアレをおこし、まさに霧のようになる。
モアレの模様は、見る角度に従って絶えず変化し、夜には動く度に壁がキラキラと輝き、壁や床や天井には水の中にいるような模様が描かれ、やわらかい印象の空間となる。
このように道路から個室までの視界を、別のイメージで徐々に重ね足していきながら、明るさを伝えていくことで、対象物との新しい距離感をつくった。 このことによって、この家はこの街で「明るい存在感」のある家となった。