SHARE 吉岡徳仁によるセラミックタイルコレクション”PHENOMENON”
吉岡徳仁とイタリアのセラミックタイルメーカーMutinaのコラボレーションによるセラミックタイルコレクション”PHENOMENON”です。
以下、吉岡へのQ&Aです。
PHENOMENONのコンセプトについてお聞かせください。
近年私は、自然現象や自然の原理をデザインの発想に取り込み、そこに独自のオリジナリティーを加えたものづくりを心がけています。今回のMUTINAとのコラボレーションでは、タイルという工業製品に、自然のもつ素材感を表現することを考え、単に自然の表層を模倣するのではなく、人の想像を駆り立て、心の記憶に残るデザインを生み出すことを試みました。
rain、honey-comb、snowシリーズから成るPHENOMENON COLLECTIONは、小さな物質を集積させることによって奥行きと広がりが生まれ、ハチのHoney-comb、結晶、雪の結晶や雫、また、植物の細胞などを彷彿とさせ、人の記憶に宿る自然の様々な表情を呼び覚まします。そして、フローリングのsnowシリーズでは和紙の質感を取り入れた素材感を表現しました。
今回初めてMutinaとのコラボレーションになりますが、プロジェクトのきっかけをお聞かせください。また、Mutinaにどのような印象をお持ちですか。
去年にMutinaからコラボレーションのお話を頂いたのがプロジェクトのきっかけです。
最初にお会いした時に、実験的な志を感じました。そのような姿勢を持ち続ける事は難しい事で、ポジティブで未来を見据えている人でないと出来ない事だと思います。また、手仕事と工業製品のバランスの良さや、色の深みにとても魅力を感じました。
セラミックタイルのメーカーであるMutinaとコラボレーションしたわけですが、セラミックという素材に対する考えをお聞かせください。
Mutinaのタイルは、本来セラミックで実現できないような奥行きのある質感を表現していて、それがとても美しく、魅力的だと感じています。タイルが見せる表情は、まるで自然界を目の前にしたときのような感情を呼び覚ましてくれるものでした。その感覚は近年の自然の原理を取り入れるという自分自身のクリエイションの方向性と強く結びつきました。
色はどのように選びましたか。
自然のもつ素材感を最大限に表現できるような色や素材を選びました。
色は白をメインとして、光そのものを取り入れたときの光と影のコントラストの強調を意識しています。
プロセスの中で苦労したことや、こだわったことなどはありますか。
基本的に企業と一緒にプロジェクトを進める際には、その企業のもっとも良い部分と自分のデザインを掛け合わせ、相乗効果をもたらすようなデザインを提案する事を心がけています。最初にセラミックという条件はありましたが、その素材の美しさを最大限に引き出すために行う実験や検証など、普段と同じプロセスで進めていきました。
吉岡さんは、近年「透明性」や「光」による表現が多いように思いますが、今回は、セラミックの素材を使われました。これまでのプロジェクトと共通する「吉岡徳仁らしさ」というものはありますか。
素材の美しさを引き出すということや、それぞれが体験した自然の風景を彷彿とさせることなど、これまでのプロジェクトと同様の考え方でデザインを進めていきました。今回のプロジェクトでは、MUTINAのセラミックでしか表現できないような美しく魅力的な質感を使って、どのようなデザインをするのか、思いを巡らせました。
日本とイタリアのデザインの違いはなんでしょうか。また、今回のプロジェクトにおいて二つの要素はどのように影響してきましたか。
僕が思うイタリアのデザインは独創性であり、また日本は詩的であると思います。詩的な日本のデザインには「自然」という要素の影響が大きいと感じています。今回は、イタリアのセラミックの風合いを通して、自然の美しさのような一瞬にしか存在しない偶然的な要素を表現したいと思いました。
今後のプロジェクトについてお聞かせください。
残念ながら具体的にお話できないのですが、来年のミラノサローネにむけて作業を進めています。
そして、今年中にKDDIとの新しい携帯電話が発表となります