SHARE 吉岡徳仁がクリスタライズ展で発表した椅子「蜘蛛の糸」
吉岡徳仁が東京都現代美術館での個展「TOKUJIN YOSHIOKA_Crystallize」で発表した椅子「蜘蛛の糸」です。
以下、デザイナーによるテキストです。
蜘蛛の糸
7本の糸から生み出された椅子。芥川龍之介の小説で釈迦は、ただ一度、蜘蛛の命を守る善行を成した悪人に、天上から蜘蛛の糸を垂らす。蜘蛛の糸は、わずかな望みの象徴であり、はかなさの象徴でもある。2008年《ビーナスー自然結晶の椅子》では、作品の結晶生成に繊維のかたまりを用いてきたが、《蜘蛛の糸》は、自然結晶の構造を応用し、自然から生み出される形により近づける試みが行われている。フレーム内に留められたわずか7本の糸はまるで蜘蛛の巣のように張られ、三次元の線画として椅子のフォルムを中空に描き出す。この構造に結晶を育てることで、7本の極細の糸は結晶構造となり椅子形に固定される。形の質量を極限までそぎ落とし、自然に倣い、自然の力で造形した、椅子の彫刻が現れる。