SHARE 浦木建築設計事務所による、神奈川県川崎市の、築36年中古住宅のリノベーション「生田の家」
写真提供:浦木建築設計事務所
浦木建築設計事務所が設計した、神奈川県川崎市の、築36年中古住宅のリノベーション「生田の家」です。
空家問題や過剰住宅供給といった社会問題への関心、
資産価値(税法における減価償却資産の耐用年数と材寿命とのギャップ、土地のみが資産となる経済構造)、
初期費用を抑えるという総合的な判断から、中古住宅のリノベーションを選択した。設計施工元のハウスメーカーの耐震診断により、現在の耐震基準を満たし、且つ躯体は健全である事が分かった。
その為申請機関に相談をし、申請を要さない工事内容とした。
実際は躯体の現状について少々不安もあったが、解体工事中、鉄骨部には錆一つ無かった。
構造躯体の合理性・納まりのシンプルさには美しさすら感じた。
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以下、建築家によるテキストです。
空家問題や過剰住宅供給といった社会問題への関心、
資産価値(税法における減価償却資産の耐用年数と材寿命とのギャップ、土地のみが資産となる経済構造)、
初期費用を抑えるという総合的な判断から、中古住宅のリノベーションを選択した。
設計施工元のハウスメーカーの耐震診断により、現在の耐震基準を満たし、且つ躯体は健全である事が分かった。
その為申請機関に相談をし、申請を要さない工事内容とした。
実際は躯体の現状について少々不安もあったが、解体工事中、鉄骨部には錆一つ無かった。
構造躯体の合理性・納まりのシンプルさには美しさすら感じた。
内部は構造上主要な部分を残し新装した。
フラットな層が積み重なった単純構成を尊重しつつ、2Fの床を一部グレーチングにして二層に分断されていた空間に広がりと変化を与えた。グレーチングを介して2層を貫く黒い空間は、構造躯体が露わとなった新旧混在する場である。プレハブ特有の細い構造材をインテリアに取入れている。黒が空間を引き締めつつ、時間と共に移り変わる光と気配をより印象付ける。また、プランは大幅に変更しつつも、設備部の既存位置を踏襲することで予算を抑えた。
外部は、過半でないS造部外壁の2面のみを新装し、開口部は風景を取込む為に移動した。
屋根、外構、残り2面の外壁・サッシ・雨戸等は全て既存を利用・補修している。
新旧の外装全てをシルバーで抽象化する事で、プレハブ創成期の姿と新装部が混在した意匠となった。
1960年頃から本格的に開発・販売が始まったプレハブ住宅は、独自の工法システム故にブラックボックスとも言われ大掛かりなリノベーションは敬遠されがちである。
この事例は、健全な躯体を持ちつつも時代に合わなくなってしまった大量生産住宅の建築的価値の向上のみならず、
その工法システム故に築年数が経っても健全な既存部を利用し、
社会・経済・資産面においても総合的に価値化する実験住宅になったと考えている。
■建築概要
名称:生田の家 -築36年中古住宅のリノベーション-
設計:浦木建築設計事務所
構造:RC造+軽量鉄骨プレハブ造 地上3階建て
工事種別:改修・昭和54年築
敷地面積:190.69㎡(57.6坪)
延床面積:122.74㎡(37.1坪)
所在地:神奈川県川崎市
竣工:2016年6月
施工:株式会社 大作
構造設計協力:正木構造研究所