SHARE 小原賢一+深川礼子 / ofaによる、富山県黒部市の公衆浴場・観光案内所「宇奈月温泉総湯」
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小原賢一+深川礼子 / ofaが設計した、富山県黒部市の公衆浴場・観光案内所「宇奈月温泉総湯」です。
富山県の宇奈月温泉の温泉街の中心となる総湯です。
大正時代に黒部川の電源開発に伴って開かれた温泉の街に、地域の普段の暮らしの中へ来客を迎えもてなすような、「湯の街の大きな家」を提案しました。
総湯の存在が「まちをつなぐこと、温泉街感を上げること、交流の場所になること」を目標として、プロジェクトを進めました。
日帰り温泉施設と観光案内所、住民利用を想定したフリースペースが併設されています。
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以下、建築家によるテキストです。
宇奈月温泉総湯
富山県の宇奈月温泉の温泉街の中心となる総湯です。
大正時代に黒部川の電源開発に伴って開かれた温泉の街に、地域の普段の暮らしの中へ来客を迎えもてなすような、「湯の街の大きな家」を提案しました。
総湯の存在が「まちをつなぐこと、温泉街感を上げること、交流の場所になること」を目標として、プロジェクトを進めました。
日帰り温泉施設と観光案内所、住民利用を想定したフリースペースが併設されています。
建物は街並みの連続性を保つよう、街路に沿って配置しています。
周辺になじむ傾斜した屋根と、地域に多い灰黒色の色合いが街並みに調和しながら、
前面の大きな格子のファサードとその奥に見える木の塊が、温泉街の印象的な風景を作っています。
1階は案内所とフリースペースです。南側は大きく開放できる格子戸として街に開き、
敷地南北に面する二つの道路まで「見通し」と「通り抜け」を作ることで街の回遊性を高めています。
温泉のある2,3階には街から見える広縁を設け、賑わいを街へ伝えます。
お湯にふれながら、ゆっくり過ごし、言葉を交わしてもらえるように、浴室には座湯やベンチなどの居場所を、浴槽をぐるりと囲むように設えました。
温泉を核に、街とつながり、街をつなぐ空間の構成です。
設計と平行して住民WS等では施設の活用の検討企画、実験が行われ、
上棟やオープンに合わせて住民によるイベントが行われるなど、
市と地域とともに動いてきたプロジェクトです。
浴槽には黒部川の石を、内部に地域産の杉を使い、宇奈月ならではの色と肌ざわりの空間です。
温泉を掛け流しとするだけでなく、給湯や暖房、融雪などに熱エネルギーとして出来る限り効率よく使う工夫にも取り組みました。
夜には、格子戸から光があふれて街をやわらかく照らしだします。
街と賑わいを共有するように開かれる格子引き戸や、穏やかな木の表情がつくる場所で、観光と地域の暮らしが交わる、宇奈月らしいおおらかで暖かな「湯の街の大きな家」となりました。
■建築概要
設計監理:小原賢一+深川礼子/ofa
所在地:富山県黒部市
主要用途:公衆浴場・観光案内所
建築面積:332.36m2
延床面積:1092.96m2
階数:地上4階地下1階
構造:鉄骨造
構造設計:有限会社桃李舎
設備設計:有限会社知久設備計画研究所
竣工:2016年3月
写真:鈴木研一