SHARE 矢橋徹建築設計事務所による、佐賀県唐津市の住宅「二タ子の家」
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矢橋徹建築設計事務所が設計した、佐賀県唐津市の住宅「二タ子の家」です。
敷地周辺には多くの日本的家屋が残る地域である。切妻や寄棟の形式を携えた住宅がやや窮屈な密度で集まる場所において、屋根形式・素材・プロポーションを納屋のような建ち方に収束させ他律性を備えている。一方、不自然なほどにシンメトリーに統御された立面は自立性を備えている。2階建て住宅というタイポロジーに対する自立/他律、連続/対立を拮抗させる状態によって、この場所の持つ詩的レベルを覚醒させている。
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以下、建築家によるテキストです。
北側に桜並木を持つ幹線道路沿いに建つ2階建て住宅である。
クライアント夫婦は桜を気に入り、この土地の購入を決めた。季節と生活が緩やかにつながる空間が求められた。ただし、敷地は奥行が浅く道路に迫った形状であったため、プライバシーの問題解決のため主室を道路との距離をとった2階で日常の大半を過ごすことができるような構成とした。対して1階は寝室群のみの開口を持たない穴倉のような空間となっている。
この二つの異なる性格の機能・空間を繋ぐ階段の寸法には特に注力して設計をしている。
一般的な住宅の階段が40°程度であるのに対して30°を切る角度の緩い階段としている。このほつれたスケールの階段は、「あがる」というよりも「あるく」に近い感覚である。二つの空間をグラデーションのように均す性格のスケールはON/OFFの明確な階の境を緩やかに繋ぐことができる。同時に細長いクレバスのような吹き抜けは一階に終日濃淡の少ない美しい光を1階に落とす効果も狙っている。2階においてはクレバス状の吹き抜けが外部との適度なバッファーゾーンとして機能し、この住宅の特徴的な場所となっている。
敷地周辺には多くの日本的家屋が残る地域である。切妻や寄棟の形式を携えた住宅がやや窮屈な密度で集まる場所において、屋根形式・素材・プロポーションを納屋のような建ち方に収束させ他律性を備えている。一方、不自然なほどにシンメトリーに統御された立面は自立性を備えている。2階建て住宅というタイポロジーに対する自立/他律、連続/対立を拮抗させる状態によって、この場所の持つ詩的レベルを覚醒させている。
■建築概要
所在地:佐賀県唐津市
主要用途:専用住宅
階数:地上2階
構造:木造
設計・監理:矢橋徹建築設計事務所
写真撮影:八代哲哉(Yashiro Photo Office)
敷地面積:163.14㎡
建築面積:84.47㎡
延床面積:115.12㎡
完成:2016年11月