SHARE アイボリィアーキテクチュア / 永田賢一郎+原﨑寛明+北林さなえによる、神奈川・横浜の、築50年の木造アパートの改修「藤棚のアパートメント」
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アイボリィアーキテクチュア / 永田賢一郎+原﨑寛明+北林さなえによる、神奈川・横浜の、築50年の木造アパートの改修「藤棚のアパートメント」です。
施主要望:
同じ地域でシェアアパートメントを過去に新築していた建主(ヨコハマアパートメント-設計:オンデザイン) は、この建物でも人が集まれるような共有空間が欲しいという思いがあった。また新築ではなく、既存の木造を活かした改修による親しみと個性のある環境を作って欲しいという要望があった。
※以下の写真はクリックで拡大します
■改修前の状況
以下、建築家によるテキストです。
背景:
地主である建主が、定期借地の返却時に土地と一緒に引き受けた築50年の木造アパートを改修するプロジェクトである。建物の前には隣家が手入れをしていた庭があり、その庭を横切る様に半分の土地が建主の元に返ってきた。そのため建主は豊かな外部環境を一部引き継ぐ形となったので、建物の改修と外部空間の環境整備を一体で行う計画となった。
既存状況:
既存建物は3部屋からなる波板貼り切妻の木造平屋の建物である。外部廊下からそれぞれの部屋に入り、庭側に1畳半程の縁側をもつ風呂なしアパートで、接道もないために建て替え、増築等が難しい建物であった。
施主要望:
同じ地域でシェアアパートメントを過去に新築していた建主(ヨコハマアパートメント-設計:オンデザイン) は、この建物でも人が集まれるような共有空間が欲しいという思いがあった。また新築ではなく、既存の木造を活かした改修による親しみと個性のある環境を作って欲しいという要望があった。
設計趣旨:
既存建物が規模の小さい3部屋のアパートであったため、部屋数を一部屋減らし、代わりに外部の庭に面して大きく共有部を設けた「2部屋+共有部」で構成されるアパートとした。共有部はアパートの入居者だけではなく、地域の人びとや興味を持ってくれた人々が、ワークショップや勉強会などでも利用出来る場所として開放しており、「2世帯+流動的な1組」という形の暮らし方を提案した。2住居の間に不特定の人が出入りする余地としての共有空間を作ることで、最小限の室数でも良好なコミュニケーションが持続する仕組みを成立させている。また共有部の前に広がる庭には、コンクリートブロック/ネットフェンス/鉄骨によるパーゴラ(藤棚)/910グリッドといった、既存建物や周辺環境のもつ素材やスケール、言語を用いて、大きくない内部空間を広げつつ、豊かな外部環境を最大限活かした空間を外構計画の範囲の中で立ち上げた。長い間庭の手入れをしてきた隣家との間に明確な境界となるような壁は作らず、最低限の視線の抜け、止めを考慮した壁をバラバラと立ち上げることで、隣家との間に心地よい距離感を保っている。この点在する壁に家具や植物、園芸の道具や物干しといった日々の暮らしの断片が時間をかけて絡みあい、外部空間の密度が徐々にあげられていくことを狙っている。
アパートのように定期的に人が入れ替わり、原状回復(ゼロの状態)が求められる場所で、経年で蓄積されていくものが価値となるような環境をつくることが、改修とアパートという形式の一つの解答であると考えた。同時に、単に居室をつくるだけではなく、近隣の方々にも使ってもらえる場所として建物を開き運用していくことで、アパートとしての不動産的価値以上の場所が創造されることが、築年数の経った小規模物件を抱えるオーナーへの希望につながることを期待している。
■建築概要
物件名:藤棚のアパートメント
物件所在地:神奈川県横浜市
設計:アイボリィアーキテクチュア/永田賢一郎+原﨑寛明+北林さなえ
施工:LIU KOBO
竣工:2016年10月
敷地面積:156.29㎡
建築面積:69.56㎡
構造:木造平屋
撮影:鳥村鋼一