SHARE 元木大輔 / DDAAによる、東京の、エイベックス社のダンススタジオ「AVEX ARTIST ACADEMY HEAD OFFICE STUDIO」
元木大輔 / DDAAによる、東京の、エイベックス社のダンススタジオ「AVEX ARTIST ACADEMY HEAD OFFICE STUDIO」です。
ものを片付けるときの方法として、最もポピュラーなのは「きれいに片付ける」ということだと思う。例えば机の上なら、机の上からものを無くして全て収納や見えない場所に隠す。でも実は机の上のものを「全てグリッド上に並べる」、とか「大きい順にきれいに並べ替える」とか、「全て白く塗りつぶす」という整理の方法だってある。どのようなコンセプトで整理するかという視点で机の上を再度見てみると「きれいに片付ける」以外の整理の方法がみつかるかもしれない。
この計画、エイベックスが運営するダンススタジオは、新しい整理の方法を考えたプロジェクトだ。
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以下、建築家によるテキストです。
ものを片付けるときの方法として、最もポピュラーなのは「きれいに片付ける」ということだと思う。例えば机の上なら、机の上からものを無くして全て収納や見えない場所に隠す。でも実は机の上のものを「全てグリッド上に並べる」、とか「大きい順にきれいに並べ替える」とか、「全て白く塗りつぶす」という整理の方法だってある。どのようなコンセプトで整理するかという視点で机の上を再度見てみると「きれいに片付ける」以外の整理の方法がみつかるかもしれない。
この計画、エイベックスが運営するダンススタジオは、新しい整理の方法を考えたプロジェクトだ。求められた施設の主な機能は、大小2つのダンススタジオ、マルチトレーニングエリアとボイストレーニングルーム、エントランスホール、そして運営用のバックヤードだった。このスタジオのエントランスホールは通常スクールの生徒と講師のコミュニケーションや、ラウンジ、運営のワークスペースとして使用される。ただ、年に数回イベントが催されることが決まっていて、家具のレイアウトを変更することで、簡易的なステージと客席として使えるようにしたいという要望があった。ただ、年に1回程度のイベントのためにステージや客席を出し入れするのはとても大変だし、収納を考えると面積効率も悪いので、出しっぱなしでも美しくふるまう家具を考えることにした。つまり、エントランスホールに置いてある象徴的な形の家具を並べ替えるだけで、年に1度のイベント用のレイアウトに変化することができる。綺麗に片付け、イベント会場をしつらえ直すのではなく、イベント用に必要なスツールなどを、エントランスホールに彫刻的にしまっておく、という考え方だ。
8の字型のマカロニがつながったような形のソファは、ひとつひとつのピースに分解することができる。連結部分をはずしで1列に並べ替えることで、イベント時の客席用にレイアウトすることができるし、また単体のひとり用スツールとしても機能する。黒いL型のソファも、小さなソファ3つをバックルとベルトでひとまとめにしているので、ステージ使用時には分解して並べ替えることができる。また、ミーティングテーブルで使用しているスタッキングスツールは4色のグレーとブルーのカラーリングになっており、グラデーション状にスタックすることができる。ワークスペースとして使っているハイカウンターはキャスターがついているので移動を容易にすることができる。普段はラウンジの家具としての機能をみたしつつ、イベント時などレイアウト変更時に必要な量の家具を「彫刻的に収納する」という考え方に基づいてデザインしている。
また、同じ考え方を応用し、トレーニングエリアでは、どうしても面積をとってしまうバランスボールの収納場所をパーテーションとしてデザインしている。TRXという体の自重を使ったトレーニング用に、天井にゴールドの器具をつるすことができるフレームを設置している。
■建築概要
AVEX ARTIST ACADEMY HEAD OFFICE STUDIO
施主:エイベックス
プロデュース:トランジットジェネラルオフィス
所在地:東京都港区
主用途:ダンススタジオ、トレーニングルーム
プロジェクトチーム: DDAA / 元木大輔, 伊東鷹介, 角田和也
施工:GARDE
家具製作:E&Y
ART:MAGMA
延床面積:1196.36m²
完成:2018年6月
撮影:長谷川健太