SHARE 二俣公一 / ケース・リアルが改修設計を手掛けた、東京・中央区の宿泊施設「DDD HOTEL」
二俣公一 / ケース・リアルが改修設計を手掛けた、東京・中央区の宿泊施設「DDD HOTEL」です。
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日本橋馬喰町に37年続いたビジネスホテルの改修計画。一般に、効率性や採算性といった観点から、国内のビジネスホテルは単に寝るためだけの場所となりがちである。今回の計画ではそのような傾向を背景に、現代に必要とされるビジネスホテルとは何か、プロジェクトチームと共にその再定義が行われた。
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以下、建築家によるテキストです。
日本橋馬喰町に37年続いたビジネスホテルの改修計画。一般に、効率性や採算性といった観点から、国内のビジネスホテルは単に寝るためだけの場所となりがちである。今回の計画ではそのような傾向を背景に、現代に必要とされるビジネスホテルとは何か、プロジェクトチームと共にその再定義が行われた。
ホテルコンセプトとなったのは、まず安眠でき、質の高い落ち着いた時間を過ごすことが出来ること。目まぐるしい現代を生きる人々が泊まるからこそ、そのような時間・空間が重視された。そして、ホテルを単に寝るためだけの場所にしないということ。具体的には、このホテルはバリスタが立つカフェカウンターが設けられているほか、フランス料理を軸に活動するシェフ集団のための実験的なキッチン空間や、立体駐車場をコンバージョンして出来たアートギャラリーが併設された複合ホテルとなっている。質の良い睡眠はもちろん、食やアートを中心とした文化的な時間も過ごせうる、そのような場所が「ビジネスホテル」の新たな在り方として位置づけられた。
ファサードは既存のアーチ窓が特徴的な赤茶のレンガタイル貼り。その既存タイルに合わせて新たに設けられた大きなエントランスゲートをくぐると、そこにはシンプルなロビーホールが広がっている。何かを付加することでホテルの設えを作るのではなく、余計なものを削ぎ落として必要なものだけを整える。そうすることで空間に落ち着きが生まれ、訪れる人の頭がリセットされると考えた。また頭上に広がる吹き抜け部分は、過去の改修の中で一時的に閉鎖されていたものを建築時の構造を活かして再度整え直したもの。ここでも照明は間接照明を使用し、シンプルな見えがかりを徹底させた。
階を上がり2階には、レセプション機能とカフェ機能とが一体になった長さのあるカウンターが設けられている。このフロアはもともと客室フロアだった場所を敢えて共用フロアとして改修しており、客室数は若干減るものの、部屋とはまた異なる落ち着いた共用空間を作っている。もともと客室フロアだったため天井高さはそれほど無いが、その分ファサード側を大開口のガラス窓に作り変えて十分な採光を確保し、フロア全体で明るい光を感じられる空間にした。
3階から上の客室フロアは、1、2階の共用部と対比して、休む場所としての意味合いを重視。各個室は機能的に必要最小限に抑えられているが、寝心地を追求したベッドマットを使用しているほか、水回りは在来工法を用いてモザイクタイルで仕上げてリラックス出来る空間を目指した。客室も含め全体のキーカラーとして木部に用いたモスグリーンは、日中は明るいグリーンのような印象になる一方、夜間には暖かみのある深いダークトーンに感じるなど、陽の当たり方や照明によって様々な表情を見せてくれる豊かさがある。シンプルな空間ながらも、ホテルで過ごす人々が時間ごとに多様なシーンを感じられることを考えた。
■建築概要
DDD HOTEL(2019年/東京)
クライアント:丸太屋株式会社
計画種別:インテリア改修
用途:複合ホテル
計画期間:2017年10月~2019年5月
建築面積:557.78平米
延床面積:4614.47平米
客室数:122名
規模:地上10階 地下1階建
計画地:東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1
全体ディレクション:Aid Inc
設計:ケース・リアル 二俣公一 下平康一 有川靖(パートナー)
施工:田辺建設、TANK
照明計画:BRANCH lighting design 中村達基
家具製作:E&Y
サイン計画:Aid Inc
コーディネーション:Aid Inc
撮影:志摩大輔