SHARE 元木大輔 / DDAAによる、ポップアップショップ「BANG & OLUFSEN ESTNATION ROPPONGI HILLS」
元木大輔 / DDAAが設計した、ポップアップショップ「BANG & OLUFSEN ESTNATION ROPPONGI HILLS」です。
Bang&Olufsenのポップアップショップのための什器は、ディテールだけでできている。もう少し正確に説明すると、透明なアクリル同士を接合するディテール部分が完全にむき出しに乾式工法だけで固定されている。ここでは什器だけをデザインしているけれど、空間や建築においてディテールがむき出しになっている、ということは分解可能であるということだ。分解が可能ということは、将来に移動の可能性が出てきた際に有利となる。さらに設備や構造がむき出しになるということは、今後の改修や修繕の可能性を想定している、ということでもある。竣工時点で完成するのではなく、もう少し長いタイムラインでデザインを考えたい。そしてその「完成しないこと」そのものが意匠を決定しているような状態をデザインの根拠にすることはできないだろうか。
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以下、建築家によるテキストです。
Bang&Olufsenのポップアップショップのための什器は、ディテールだけでできている。もう少し正確に説明すると、透明なアクリル同士を接合するディテール部分が完全にむき出しに乾式工法だけで固定されている。ここでは什器だけをデザインしているけれど、空間や建築においてディテールがむき出しになっている、ということは分解可能であるということだ。分解が可能ということは、将来に移動の可能性が出てきた際に有利となる。さらに設備や構造がむき出しになるということは、今後の改修や修繕の可能性を想定している、ということでもある。竣工時点で完成するのではなく、もう少し長いタイムラインでデザインを考えたい。そしてその「完成しないこと」そのものが意匠を決定しているような状態をデザインの根拠にすることはできないだろうか。
そして、ディテールは文章の接続詞や句読点のようなものだ。「柱、スチール、ガラス、板」「柱にスチールとガラスの板」「柱はスチール、ガラスは板」では文章自体の意味が変わってくる。さらに、「ここではきものをぬいでください」のように、建築家やデザイナーがどこに読点を打つかによって全体の意味がまったく変わってくるような、接合部やディテールをできるだけミニマムな操作で丁寧にデザインすることで、全体に大きな影響を与えることができる方法を考えてみたい。
たとえば金継ぎのように、接合部や補修方法そのものが全体の意匠を支配している状態はどうか。金継ぎは、割れや欠け、ヒビなどの陶磁器の破損部分を漆によって接着し、金などの金属粉で装飾して仕上げる伝統的な修復技法だ。器は何でもよい。だれかの一人称や強いコンセプトでつくるのではなく、欠損やノイズを受け入れる。そして、割れれば直すことが繰り返されるので、完成や竣工という概念もない。そんな方法論で何かをつくりたいと考えている。
■建築概要
BANG & OLUFSEN ESTNATION ROPPONGI HILLS
施主:BANG & OLUFSEN
場所:Minato-ku, Tokyo
用途:Pop-up Store
設計:DDAA
プロジェクトチーム:Daisuke Motogi / Kazuya Sumida / Yousuke Itoh
家具製作:E&Y
延床面積:26.29m²
完成:October / 2019
写真:Kenta Hasegawa