梅村陽一郎+神永侑子 / AKINAI GARDEN STUDIOが設計した、神奈川・横浜市の、住戸改修「洞窟のある家」です。“現状回復なし”での賃貸住戸の改修計画、コロナ禍以降の住まいの在り方を再考して小さな感動を発見する感性を育む空間体験を目指し設計、機能で呼ぶ部屋でなく光の強弱ある複数の空間をつくりました。
日常の暮らしに感動体験を持ち込んだ、「洞窟」のある家。
「暗がりと明るみ」が共存する、光環境の強弱あるダイナミックな心地よさを計画した。
日常の中の小さな感動を見過ごさない感性を養うような、刺激的な空間体験が家には必要ではないかと考えた。
そこで、リビングのように機能で呼ばれる部屋は無くして、既存の窓の無い部屋を最大化するように、空っぽで暗い、洞窟と呼ぶ不安定な「暗がり空間」を配置した。その周りを囲むのは正反対に、明るく家らしい設えの異なる3つの部屋である。この強弱ある4つの環境を行き来しながら、どこで働き、どこで食べ、どこでリラックスするか、自分の感性を能動的に活性化し滞在場所を選び取る「環境」としての住処を目指した。
この物件は築50年程の賃貸マンションの1室である。リフォームのような現状維持的改修ではなく、個人的な暮らしに対する意識から生まれるオリジナリティある空間へのアップデートが行われた。賃貸住宅であるにも関わらず、現状回復なしという不動産価値の定義を大きく揺るがす条件により生まれる個性あふれる住処は、持ち家を所有しない人でもより気軽に、「誰かの暮らし方」に触れ、自分らしい暮らしの本質とは何か考えるきっかけとなることに期待したい。
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以下、建築家によるテキストです。
日常の暮らしに感動体験を持ち込んだ、「洞窟」のある家。
「暗がりと明るみ」が共存する、光環境の強弱あるダイナミックな心地よさを計画した。
2020年のコロナ禍において、家で働き、過ごす時間が半ば強制的に増えた。出勤という身にまとう環境をスイッチするきっかけがなくなると、日々団欒を重ねた居心地の良い家もどこか単調で物足りなく思える。改めて人間が生きていく「住処」の役割とは何か思考を巡らせた。 最高に楽しく仲間と笑い合う時間も、落ち込んで悲しい時間も、なんてことない日常こそ人生の時間の大半を占める、欠かせないエネルギーだ。
そんな日常の中の小さな感動を見過ごさない感性を養うような、刺激的な空間体験が家には必要ではないかと考えた。
そこで、リビングのように機能で呼ばれる部屋は無くして、既存の窓の無い部屋を最大化するように、空っぽで暗い、洞窟と呼ぶ不安定な「暗がり空間」を配置した。その周りを囲むのは正反対に、明るく家らしい設えの異なる3つの部屋である。この強弱ある4つの環境を行き来しながら、どこで働き、どこで食べ、どこでリラックスするか、自分の感性を能動的に活性化し滞在場所を選び取る「環境」としての住処を目指した。
また、この物件は築50年程の賃貸マンションの1室である。リフォームのような現状維持的改修ではなく、個人的な暮らしに対する意識から生まれるオリジナリティある空間へのアップデートが行われた。賃貸住宅であるにも関わらず、現状回復なしという不動産価値の定義を大きく揺るがす条件により生まれる個性あふれる住処は、持ち家を所有しない人でもより気軽に、「誰かの暮らし方」に触れ、自分らしい暮らしの本質とは何か考えるきっかけとなることに期待したい。
最後に、このプロジェクトでは建築的な価値説明に加え、人が使い始めてこそ発揮する住空間に流れる空気の質や時間価値など、体験的な実感を伝えたいと考えた。
竣工写真に含まれる、暮らしの時間を切り取ったスナップショットや、空間のコンセプトmovieを見て、竣工写真や図面、テキストだけでは捉えきれない総体的な空間の質を感じてもらえたら嬉しい。
■建築概要
所在地:神奈川県横浜市
用途:住居(賃貸マンションリノベーション)
クライアント:株式会社泰有社
施工:シャンティアートワークス
天板施工:中村塗装工業所
天板協働:いすみ古材研究所
延床面積:60.62㎡
設計期間:2021年11月~2021年3月
施工期間:2021年4月~2021年5月
MovieDir:YUJI KAMIYAMA
MovieSound:DISK
写真:Syuheiinoue