山田伸彦建築設計事務所が設計した、東京・文京区の住戸改修「大塚の家」です。
約200㎡の空間での計画です。建築家は、広さに起因する単調さの回避と豊かさの付与を目指し、視覚に加え触覚にも訴える“肌理”に注目して多様な素材を組合せる建築を志向しました。また、畳や障子等も採用し“日本的な美”の要素も導入して設計しました。
東京都文京区の築50年の集合住宅の内装の改修計画。
一般的にイメージする集合住宅とは規模が異なり、200㎡ほどの面積がある。広い空間では、素材の使い方によっては「のっぺり」とした空間となる懸念が出てくる。施主の要望に加えて、ここでは劇的に空間のつくりを変えるのではなく、さまざまな素材の集積によって空間の質に豊かさを与えるような、人の視覚と触覚の琴線に触れる建築が良いのではないかと考えた。
全部を同じ肌理で統一するのではなく、「ざらざら」した左官の壁や天井、「すっきり」したディテール、「ざっくり」「つるり」とした素材感をちりばめることに加え、畳や障子、明かり、重心の低い空間、陰りや柔らかな光、中間領域を作ることで、日本に培われた美しいと思うモノを組み合わせながら建築の構成を試みた。
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以下、建築家によるテキストです。
東京都文京区の築50年の集合住宅の内装の改修計画。
一般的にイメージする集合住宅とは規模が異なり、200㎡ほどの面積がある。広い空間では、素材の使い方によっては「のっぺり」とした空間となる懸念が出てくる。施主の要望に加えて、ここでは劇的に空間のつくりを変えるのではなく、さまざまな素材の集積によって空間の質に豊かさを与えるような、人の視覚と触覚の琴線に触れる建築が良いのではないかと考えた。
完全なスケルトンにするのではなく部分的に既存の壁や床、天井を残し、設計を行っている。既存の駆体の梁型やコンクリートブロックの下地壁などの動かせない部分の制約があるものの、外気に面する外周側の壁には断熱材を加え現代における快適性を底上げし、水回りを移動し動線を整理することで利便性も兼ね備えた空間を目指した。具体的な素材の使い方として、小幅の床材、凹凸のついたオークの無垢パネル、石材、色のついたガラス、左官の壁、色味の異なる塗装を建築の壁、床、天井に振り分けていける。
建築的な要素以外にもカーテンや照明といった要素を手掛かりに空間に柔らかさを与え、視覚だけでなく手触りや素材の持つ温度といった触覚にも訴えるような肌理(きめ)をインテリアに考えている。
全部を同じ肌理で統一するのではなく、「ざらざら」した左官の壁や天井、「すっきり」したディテール、「ざっくり」「つるり」とした素材感をちりばめることに加え、畳や障子、明かり、重心の低い空間、陰りや柔らかな光、中間領域を作ることで、日本に培われた美しいと思うモノを組み合わせながら建築の構成を試みた。
■建築概要
作品名:大塚の家
計画地:東京都文京区
計画種別:改修
用途:専用住宅
設計:山田伸彦建築設計事務所
施工:渡辺富工務店
内装:柏木内装
塗装:中野コーティング
設備:サト商ビルフレックス
電気:野島電工
家具:ワタナベ製作所
建具:武藤建具
タイル:ワダセラミック
照明設計協力:DAIKO 担当/渡辺嘉恵
構造:RC造
延床面積:197.05㎡
バルコニー:23.04㎡
設計期間:2021年4月~2021年6月
施工期間:2021年7月~2021年12月
写真:Nacasa&Partners 金子美由紀