STA土屋辰之助アトリエが設計した、東京・墨田区の「House HJ」です。
既存建物の住居部分の改修です。建築家は、多趣味な施主家族の為に、展示収納を担う“造作棚”にベンチ等の機能も与えて“直線的な動線”空間の壁面に配置しました。また、“回遊的な動線”を与えた諸室との組合せで“新たな広がり”を生み出す事も意図されました。
既存建物は墨田区本所地域では定番の1階が工場、2、3階が住居の積層建築である。
上階は本改修前から既に2世帯住宅化されており、今回、子世帯である2階部分のリノベーションを行った。通りに面しながらも敷地形状に合わせて奥まった空間も併せ持つ、L型の平面形をどのように改変するかが改修設計のテーマであった。
クライアント家族は趣味も多彩で、書籍や様々なアイテムの展示収納を兼ねた造作棚を充実させることが要求としてあったため、Lの内側には一面壁面棚としており、それらが各機能と動線をつなぎながらも様々な機能をもつ仕掛けとなっている。特に開口部は間仕切り壁を撤去すると、室内に対しては脈絡のない配置となるため、この壁面棚により統一性を持たせることができる。
また、壁面棚の30cm程の厚みが棚であり、ベンチであり、ピアノの収納であり、猫のためのキャットウォークにもなっており、更には部屋と動線に間仕切りを設けないことで、この棚は廊下の棚でもあり部屋の棚でもありと二重の役割をもつことや将来の多様な使い方への柔軟性を確保している。
住宅内部の動線としてもL型の壁面棚に沿った直線的な動線とそれに付随する各機能の回遊的な動線が重なり合うことで既存平面には無かった新たな広がりが生まれた。玄関は共用階段室を内部に引き込んだ土間のような空間となっており、そこから直接キッチンにアクセスできる、勝手口のような回遊性も同時に生み出している。
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以下、建築家によるテキストです。
ワンフロア内の多様性、L型平面と壁面棚、直線動線と回遊動線
既存建物は墨田区本所地域では定番の1階が工場、2、3階が住居の積層建築である。
上階は本改修前から既に2世帯住宅化されており、今回、子世帯である2階部分のリノベーションを行った。通りに面しながらも敷地形状に合わせて奥まった空間も併せ持つ、L型の平面形をどのように改変するかが改修設計のテーマであった。
クライアント家族は趣味も多彩で、書籍や様々なアイテムの展示収納を兼ねた造作棚を充実させることが要求としてあったため、Lの内側には一面壁面棚としており、それらが各機能と動線をつなぎながらも様々な機能をもつ仕掛けとなっている。特に開口部は間仕切り壁を撤去すると、室内に対しては脈絡のない配置となるため、この壁面棚により統一性を持たせることができる。
また、壁面棚の30cm程の厚みが棚であり、ベンチであり、ピアノの収納であり、猫のためのキャットウォークにもなっており、更には部屋と動線に間仕切りを設けないことで、この棚は廊下の棚でもあり部屋の棚でもありと二重の役割をもつことや将来の多様な使い方への柔軟性を確保している。
住宅内部の動線としてもL型の壁面棚に沿った直線的な動線とそれに付随する各機能の回遊的な動線が重なり合うことで既存平面には無かった新たな広がりが生まれた。玄関は共用階段室を内部に引き込んだ土間のような空間となっており、そこから直接キッチンにアクセスできる、勝手口のような回遊性も同時に生み出している。
下町ならではのこのような気安さは積層の建築においても工夫次第で盛り込めると感じており、1枚のドアの開閉だけで外部と関係するのではなく奥に引き込み生活空間に徐々に接続する「段階的な動線」と利便性によりダイレクトにキッチンなどに通ずる「直接的な動線」を共存させることで成立する。
東に面して大きな開口部があったため、それを活かした開放的で自然光の降り注ぐリビングと鏡張りにしてダンスやヨガなどにも利用できるマルチスペースを配置、ダイニング、キッチンを経由し奥の各部屋、水回りへと段階的に私的な空間へと移行する。
周辺を中層の住宅で囲まれた住環境の向上もめざし、フロストガラスでの二重サッシ化や熱交換機の導入を行いつつ、元々和室の縁側空間であったことを活かして半屋外化したインナーテラスとそこに連続する広く快適な家事室も含めて住宅の中での様々な居場所の快適化を試みている。
■建築概要
所在地:東京都墨田区
主要用途:個人住宅
建築主:個人
設計・監理:STA土屋辰之助アトリエ
担当:土屋辰之助、広瀬匡基
照明計画協力:大村智子
施工:アトリエ・ポンテ
構造・規模:鉄骨造、地上3階建ての2階部分
地域地区:準工業地域、防火地域
最高高さ:10.25m
敷地面積:185.40㎡
建築面積:128.38㎡
延床面積:327.87㎡のうちの128.38㎡
設計期間:2022年6月~2022年11月
工事期間:2022年12月~2023年3月
写真:井上登、STA土屋辰之助アトリエ