SHARE 水谷隼人+山本恭代+山崎千恵による「旅する小さな家」
水谷隼人+山本恭代+山崎千恵による「旅する小さな家」です。
長谷川豪らが審査員を務めたコンペの最優秀作品が実現されたものです。
このプロジェクトはSaitama Muse Forum 主催のアート空間デザインコンペ「旅する小さな家」で200 点以上の応募の中から最優秀賞となった案を、総予算300 万円で実現したものである。コンペの概要は「旅」する先々で小さなパーソナルスペースを生み出し、それが街のなかに出現することで場所の魅力を引き出し、周囲に様々なアートの可能性を拡げる「小さな家」を提案するというものであった。2014 年11 月9 日に埼玉県の別所沼公園に1日限定で設置され、公園を利用する一般の方をはじめ、多くの方にこの不思議な空間を体験して頂いた。
※以下の写真はクリックで拡大します
完成した様子の動画
制作プロセスの動画
以下、作品に関するテキストです。
私たちは普段、見慣れた風景や周囲でのできごとを見ているようで見ていない。すぐそこに木が強い生命力を持って生えていること、一緒にいる友人が今日は赤い服を着ていること…何気ない“気づき”を見過ごしてしまっていることは悲しいことだ。
これは小さな仮設建築である。2.4m四方の木の板を、スペーサーをかませながら48 枚積層させている。内部空間が球体になるように、一枚一枚の板は円形にくりぬかれている。
40 ㎝×60 ㎝のにじり口のような小さな入口から、身体を屈めて入る。内部は黒く塗られていて、外観から想像するよりも大きく感じられるが、暗すぎてどんな空間なのか把握するのに数秒かかる。しばらくすると、板と板の隙間から、周りの風景や色が切り取られて視界に入ってくる。木の「緑」がとても鮮やかで、外にいる友人の服の「赤」がちらちらと動く。さっきまでは意識していなかった景色がすぐそこにあることに気づく。どこからともなく外の音や会話が聞こえてきて、それが遠くの音なのか近くの音なのか、距離感が分からなくなる。一歩踏み入れただけで小宇宙・異空間・別世界、そのようなことばが似合うような空間、それを体験することで「何か身近なこと」を再認識できるような建築をめざした。
このプロジェクトはSaitama Muse Forum 主催のアート空間デザインコンペ「旅する小さな家」で200 点以上の応募の中から最優秀賞となった案を、総予算300 万円で実現したものである。コンペの概要は「旅」する先々で小さなパーソナルスペースを生み出し、それが街のなかに出現することで場所の魅力を引き出し、周囲に様々なアートの可能性を拡げる「小さな家」を提案するというものであった。2014 年11 月9 日に埼玉県の別所沼公園に1日限定で設置され、公園を利用する一般の方をはじめ、多くの方にこの不思議な空間を体験して頂いた。
当初から、この公園を皮切りに埼玉県内の数か所を旅することが想定されていた。そこで、木板を2〜4枚で1ユニットとし、重量を80kg程度に抑えることで、人力で運搬・組立てができるようにした。“旅する”ための工法である。そうして人の手によって数十回に分けて積み上げられた板そのものが“構造”であり、“外観”であり、“内観”にもなっている。外から中を覗いても暗くて中の様子はよくわからないけれど、遠くからこの“小さな家”を眺めると、向こう側の景色が透けてみえるほど軽やかな建築である。風景になじみながらも一方で、その中では体験したことのない球体のパーソナルスペースが展開されるという相反する状態が実現できたと思う。
今年の夏と秋には更なる「旅」が予定されている。(詳細は未定)。
なお、この作品の秋以降の引き取り手を探しています。ご興味のある方はこちらにご連絡ください。
mail : hayatomizutani@gmail.com
水谷隼人
1985年生まれ。東京理科大学理工学部、およびリヒテンシュタイン大学で建築を学ぶ。
スイス、リヒテンシュタインにて建築設計。現在ハンブルク造形美術大学にて写真専攻。
山本恭代
1985年生まれ。東京理科大学理工学部および同大学院で建築を学ぶ。現在建設会社勤務。
山崎千恵
1985年生まれ。東京理科大学理工学部で建築を学ぶ。現在組織設計事務所勤務。