SHARE 窪田勝文 / 窪田建築アトリエによる、福岡県福岡市の、事務所・ショールーム「kitchenhouse fukuoka showroom」
窪田勝文 / 窪田建築アトリエが設計した、福岡県福岡市の、事務所・ショールーム「kitchenhouse fukuoka showroom」です。
この建築は、日本の中ではシステムキッチンの先駆的メーカー kitchenhouseの福岡ショールームとして計画され、建てられた場所は、アジアとの窓口とも言える福岡国際空港の至近にある。周辺にはテニスやサッカー、野球等の総合的な運動公園が有り、木々に溢れ、緑に満ちた環境が爽やかな豊かさをもたらしてくれる。丘状の高台にある敷地からは空港を見下ろす事が出来、飛行機の離着陸を眺めている内に自身も共に空高くへと舞い上がりそうな気持ちにさせられる。その高揚感に触発されながら、この場所での建築の在り方を考えていく。
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以下、建築家によるテキストです。
この建築は、日本の中ではシステムキッチンの先駆的メーカー kitchenhouseの福岡ショールームとして計画され、建てられた場所は、アジアとの窓口とも言える福岡国際空港の至近にある。周辺にはテニスやサッカー、野球等の総合的な運動公園が有り、木々に溢れ、緑に満ちた環境が爽やかな豊かさをもたらしてくれる。丘状の高台にある敷地からは空港を見下ろす事が出来、飛行機の離着陸を眺めている内に自身も共に空高くへと舞い上がりそうな気持ちにさせられる。その高揚感に触発されながら、この場所での建築の在り方を考えていく。
前面道路に面した駐車スペースは元々建設する事が出来ない場所であり、建設可能な本来の敷地は典型的な旗竿敷地で、とても不整形な形状をしていた。周囲と接する4辺のうち2辺は 6m、1辺は1.2m、前面道路とは 2m程の高低差をはらみ、何とも掴み所のない敷地だった。レベルや形状、周囲との噛み合わない状況に糸口を見出せずにいたある日、道路から唯一の進入路となるスロープを歩いていると、敷地の向こうに見える小さな森に神社がある事に気が付いた。神社には地域を護る産土神が祀られており、この地に生まれ来る建築として産土神への深淵なる敬意を払うところから全てを始める事とする。アプローチとなる長いスロープから真っ直ぐに敷地を突き抜けた位置に神社があり、アプローチから神社への軸線を遮らぬ事を基本として、1、2階の平面計画は軸線の左右にエントランスとイベントホール、軸線上にはヴォイドなスペースを設ける事とした。又、3、4階はキッチンの展示の為の空間で、長期的な計画を視野に入れ、出来るだけフレキシブルで回遊性の高いオープンな空間とする様に心掛けた。
これまでに住宅やクリニック、保育園等々の実作を通じ一貫して目指して来た建築の在り方を、より繊細に、より入念に反映し、いつも以上に多くの人々の堅く閉ざされた精神が軽やかに開かれていく様に計画を進めていく。建築の中心部に設けられたヴォイドなスペースには、神社に向かう軸線上を走る流れと屋根に空いた開口へと立ち上がる流れ、そしてそれらを取り巻く自然が交錯し、そこに『空』なる世界が実態化する。『空』なる世界とは、存在が有る事を前提とする単純化や最小限化とは本質的に異なり、何かが存在する事を前提としない世界観を指し示す。極限的に何も無い完全なる『空』、そこには己の精神と自らを成立させる自然しか存在せず、建築はその両者が反応を起こす上での触媒として機能し、各々が反応し一つになって何者にも束縛されない自由で無限なる精神へと昇華する。
更に又、1700㎡を超える建築全体を、たった2枚の白いスラブを折り曲げて空間化していく。敷地に沿った緩やかな曲面や天空との境界も柔らかな曲面を用いる事で、空間を分離する内外の境界を曖昧にしようと目論んだ。壁や天井の大きな白い曲面による光の反射が、空間全体をどこまでも淡く白い光で充満させ、柔らかな光に満ちた空間は、立体から陰影を、実体から重力を失わせ、具象を抽象へと導いていく。全てが抽象へと向かう力は、既存の意識で固定化された精神を緩やかに解きほぐし、無限に広がる自由な意識へと誘って、目の前を飛び立つ翼と共に心はどこまでも自由に羽ばたいていく。
(窪田勝文)
■建築概要
設計:窪田勝文/窪田建築アトリエ
所在地:福岡県福岡市博多区
用途:事務所, ショールーム
敷地面積:1406.42m2
建築面積:703.21m2
延床面積:1724.64m2
階数:地上4階
構造:RC造
設計期間:2011-13
工事期間:2013-14