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以下、建築家によるテキストです。

ハンブルク大阪姉妹都市提携30周年を記念して，ハンブルクを拠点にする建築設計事務所KAWAHARA KRAUSE ARCHITECTSは，おなじくハンブルクを拠点に活動する日本人アーティスト綿引展子さんと協働し，この夏，ハンブルクに仮設アートパビリオンを設計しました．
敷地として選定したのは，ハンブルク市の中心に位置するプランテン・ウン・ブローメンという市民公園の一角です．中世の城壁跡地が公園として再開発されたため，旧市街を抱くように横たわる帯状のこの公園は，さながらハンブルクのセントラルパークかのごとく，数多くの市民や旅行者に愛されています．

緑と水そして色彩の豊かな風景の中にそっとおかれた正方形のプラットフォームと，その上に浮かぶ正方形の屋根という単純かつ抽象的な構成．そのかたちや色づかいから，一見すると周囲の公園の風景とは大きなコントラストをなしそうにも見えますが，光と影，風や色を通して，屋根下の幾何学と色彩が，周囲の自然と「すごく異なっていそうで，でもなんだか似ている空間」を表出させることを目指しました．単純な連続とも接続とも違う，屋根下からプラットフォーム，そしてそれを超えた周りのランドスケープがお互いにじわりとにじみあうような関係がそこにはあります．
また，日本においてはおそらく東屋，ヨーロッパにおいてはパビリオンとして知られるタイポロジーには，さまざまな共通点と相違点が見いだせます．そのふたつを橋渡しできるよう，あえてこのプロジェクトには「Belvedere」というヨーロッパの庭園パビリオンによく見られる既知の名称を与え，見慣れているようで何か違う，「既視感の中にある新鮮さ」がプロジェクトの呼び名においても宿るよう努めました．

このプロジェクトの大きな性格を決定づけているのは「仮設」であるということで，最初から壊し方を考えながら作るという，会期終了後のクリーンな解体を見据えてすべてを計画しました．主要材料は紙とし，なるべく接着剤も使わないようにしているため，解体時にはそれぞれの部材をバラバラに解体することができ，違う場所への移設も可能になることを念頭に置いています．すべての材料は余すところなくリサイクルされる予定です．

■建築概要

Belvedere
Planten un Blomen, Hamburg
2019
KAWAHARA KRAUSE ARCHITECTS
プロジェクトチーム：川原達也、Ellen Kristina Krause、Lea Frenz
カラーコンセプト：綿引展子（アーティスト）
構造：B+G Ingenieure Bollinger und Grohmann GmbH、Prof. Klaus Bollinger、Andreas Rutschmann、Noel Kühn