二俣公一 / ケース・リアルによる、東京・調布市の「深大寺の家」です。
隣地の木々が特徴的な敷地に計画されました。建築家は、“赤土”をイメージした家の要望に、“ベンガラ”を用いて環境と対比させ“場所”への“意味合いを強める”設計を志向しました。また、バイヤーの施主の活動拠点にもなる“ギャラリーの様な”空間も内包する建築です。
東京・調布市にある閑静な住宅街。敷地の隣には生産緑地の木々が植えられており、施主はこの環境を気に入っていた。
施主からの要望の一つは、この緑と対比的な“赤土”や“赤茶”をイメージした家にすること。そしてもう一つは、家を「住まう」だけの場所ではなく、街に開かれたギャラリーのような場所としても使うことであった。施主はデザインやアートを扱うバイヤーであり、ディレクターとしても活動する。この家は、施主の公私にわたる様々な活動の新しい拠点である。
この建築を最も特徴づけるのは、外壁に使った「ベンガラ」の深みのある赤である。
ベンガラは耐候性の高い顔料で、古くから日本家屋の塗料としても使用されてきた。周囲と同系色を用いて環境に溶け込ませるのではなく、敢えて対比的な色味を使い、この場所に建築する意味合いを強めたいと考えた。そして赤茶色の外壁には、ガルバリウム鋼板を用いてシルバーの屋根や庇を組み合わせた。外構には日本の南国系の植物を植え込み、周囲の緑との対比をさらに強めている。
その緑を横目に、テラスと一体的になったアプローチを進むと、吹き抜けのある大きな土間へと連続的に続いていく。エントランスからこの土間にかけては、赤味のある石を混ぜ合わせた洗い出しで仕上げた。土間は、外と中とをつなぐ場所でもあり、様々な場面でこの家の境界を曖昧にする。
例えば1階は、普段はリビングダイニングとして機能し、イベントの際にはセミパブリックな展示空間となる。通常よりも高めに設定されたダイニングカウンターは、ある時は展示のためのディスプレイ台に、またある時にはキッチンと併用して立食のための提供カウンターへと柔軟に役割を変える。さらにカウンターやソファなどの家具は、土間とフローリングとの境界に設え、靴を脱がなくても使えるよう設えた。多様なシーンを想定したことが、この家をさらに特徴づけている。