清水俊貴 / 福井工業大学建築土木工学科と山田寛 / LoHAによる、福井・勝山市の店舗「nimbus」です。
磯崎新と伊東孝が設計した住宅を店舗に改修する計画です。建築家は、“生きられた建築”を目指し、既存の保護と整理に加えてグリッド等を継承する“チューニング”としての設計を志向しました。そして、既存空間が持つ“公共性”の質を更に引き出す事が意図されました。店舗の公式サイトはこちら。
福井県勝山市に、昨年9月にオープンしたスカーフ&ライフスタイルショップnimbus(ニンバス)。
勝山市には建築家・磯崎新が設計した2軒の住宅がある。そのうちの1軒について住宅から店舗へと改修設計(我々はチューニングと呼ぶ)を行ったものである。
まずはコンクリート躯体の可能な限りの保護に努めた。屋上防水や排水ルートの改修、打放しコンクリートの補修及び表面コーティングの再塗装を行った。また幾度もの設備工事によると思われる配管が無数にあったため、不要な配管撤去を行った。
インテリアについて、既存の磯崎建築の強い形式性を持つ打放しコンクリート躯体(1050mmグリッドや天井ドーム)を「天」、その下での人の営みを「地」に見立ててみた。天と地の間でスカーフや雑貨達が、雲の様にふわふわと漂うような、やわらかい可変性を持つ臨機応変な商品展示(組み換え可能な大きなテーブル、吊りワイヤー用の壁に設置した丸環)を意図した。
既存什器カウンターの塗り替え、床の張り替え、新たな什器の仕上げ等に、既存躯体とスカーフ等の商品が共存するよう表面のチューニングを行っている。
我々が大切にしたことは建築を「リノベーション」するのではなく、チューニングを合わせるように設計をすることである。そもそも建築は時代に合わせて最適なチューニングをなされて設計されていると言える。しかし、時代を重ね、所有者が変わり、用途が変わると、当然のことながら当時の最適なチューニングからズレが生じる。そのズレをそのまま生かすのか、改修するのかという作業を一つ一つ選択し、チューニングし直したのがこのnimbusである。
一見すると何も変わってないと言えるし、ガラリと変わったとも言える。この「変わっているようで変わっていない」という感覚こそが、チューニングという行為の醍醐味である。そもそもチューニングという行為は、些細な変化をもキャッチする行為が求められる。よってチューニングするということは、物事に敏感で、些細なことを観察するということである。チューニングという手法は、コンセプトありきの建築手法とも違うし、今までの「リノベーション」という手法とも異なる。チューニングは、その都度コンセプトが流動的に変化し続け、それにより付加価値も変化し、その変化に機敏に反応し、カスタムしていくことである。