大松俊紀アトリエが設計した「PENG-01」です。
建築家が継続的に探究するアルミ製椅子の一環として作られました。建築家は、“椅子という束縛”から離れた存在を求め、“脚・座面・背板”という構成要素を曖昧にするデザインを志向しました。また、素材の特性を最大限に生かした形状も模索されました。
背板のないスツール以外では、椅子は基本的に、脚、座面、背板という三つの部分が存在することが多い。
この三つの関係が曖昧になればなるほど、椅子は椅子という束縛から離れていく。
今回最初に思いついたのが、脚と背板が連続し「r」を描いたような断面形状であった。
そしてこの形が三つ集まり、「r」の形の窪みの部分だけで座面を支えることで、脚、座面、背板という三つの形が曖昧に連続し、力の流れがすぐには理解できないような一見した限りでは不安定に見える椅子がデザイン出来ないかと考えた。また同じ形が三つ集まることで、背板であった部分は肘掛けにもなり、柔らかに人を包み込むような形となった。
アルミニウムの溶接において、厚みを3mm以下にすると歪みの問題が生じることが経験上分かってきたので、薄くしても4mm厚を使用することが多い。今回の形状は前面の座面下が開いており、構造的な不安が残っていた。最初に図面化した際に、側板をとりあえず5mm厚で設定し、試作を作りながら厚みを上げていくことを考えていた。
しかし、色々な製作方法の検討を重ねることで、当初の5mm厚で構造的に全く問題なく出来ることが分かった。
また意外なことに、今までデザインしてきたアルミニウム製の椅子の中で構造的に最も強い形状の一つとなり、100kgの体重が掛かっても全く問題なかったのは驚きであった。