松井大佑 / Atelier komaが設計した、福岡・春日市の、診療所「light and space」です。
リハビリ設備も有する整形外科医院の計画です。建築家は、患者が何度も往来する“待合”を主題とし、診療室とリハビリ室の緩衝帯にもなる“大らかな気積”で“縦横に光が溢れる”空間を考案しました。また、純白素材等の選択で光の拡散も意図されました。
福岡市のベッドタウン、春日市に新規開業する整形外科の計画。
敷地は道路拡幅事業に伴い、2区画が病院エリアとなる一角にある。隣接の内科と薬局が先行して建築されること、駐車場の配置と拡幅道路から敷地内への進入口も決まっていたこともあり、建ちかたは自然と固定されていった。そのなかで所定の面積を確保することが求められ、特にリハビリ室は建主の経験則から〇〇㎡以上必要、ということも計画を左右する条件であった。
クリニックの設計は建築計画学的要素が強く、特に動線計画は患者と医療従事者をつむぐ医療建築の要だ。今回の整形外科では「受付→待合→診療→待合→リハビリ→待合」の順に患者の動線がつながる。「診療」や「リハビリ」は空間の豊かさもさることながら、医師と患者のコミュニケーションによって診察/治療がなされていくため、空間はそのコミュニケーションを後推しする背景としての役割が強い。
何度も往来を重ねる「待合」に注目する。受付を済まし診療に呼ばれるまでの間、病状によってはすこしの緊張とともに過ごすこともあるだろう。また、クリニックのなかで唯一、医療行為の行き届かない場所とも言える。次第に、さまざまな心境の患者が集う「待合」について考えることが本プロジェクトの命題となっていった。
待合だけは空へ向かって背を伸ばし、細くて高い空間とした。空に向かって伸びた待合上方には、南側に面してハイサイドライトを設けた。挿す光が診察エリアの背となる白い壁面を照らすとともに、地上部に光をやんわりと落ちる。その光が床にバウンドして、リハビリエリアにも届くようガラスを用いて仕切り、縦横に光が溢れる空間とした。
インテリアも光を手綱に進めた。純白の壁と床を下地として、奥まった場所にはステンレスの家具を配置し、その光沢が光を拡散させるように計らった。色彩は春日市の色であるとともに医療器具にも多く用いられる萌黄色と、その補色としての朱色をアイキャッチに施し、建築と備品を馴染ませようとした。