長坂常 / スキーマ建築計画が設計した、東京・狛江市の、銭湯「狛江湯」です。
周辺に緑や空き地が残る地域のバー等も備えた施設です。建築家は、環境を取り込んだ“心地よい”建築を求め、親和性も意図して“緑のオリジナルタイル”の空間を考案しました。また、寸法の異なる三種のタイルの貼り分けで視覚的体験も生み出されました。施設の公式サイトはこちら。
そもそも銭湯は家庭にお風呂がなかった時代、特に戦後、衛生面を整えるために銭湯は瞬く間に関東エリアに生まれた。
そのとき、少しでも希望をということで富士山が関東の多くの銭湯の壁に描かれた。そして、毎日のルーティンの中で繋がりが生まれ地域コミュニティの場所として機能していた。それから半世紀以上たち、どの家庭にもお風呂がある時代になり、さらに西洋文化のおかげで朝にシャワーを浴びるなどの習慣が定着するうちに銭湯が廃れてきた。もちろん、家にあろうが、毎日の日課としてくるお客さんもいるのだが、次世代に銭湯業を引き継ぐには難しく、昨今、瞬く間に銭湯が街から消えていっている。
この狛江湯もその一つの対象ではあるが、オーナーである西川さんが銭湯を残したいと考え、自ら次世代として引き継ぎ経営を始めた。
その中、我々が手がけた黄金湯を見て、お声をかけていただいた。黄金湯では寝る前の数時間に少し潤いを与えられたらということで、風呂だけではなく、サウナとビールの飲める番台を用意した。今回も同じコンセプトだが、ロケーションが私の自宅から歩いて30分電車を使うとわずか15分ほどのところで、まさにマイ銭湯かつマイコミュニティのつもりで設計に携わらせていただいた。
元々、黄金湯と同様ビル型銭湯の鉄筋コンクリート造で上階に居住空間を持つ建物だ。ただ、この狛江は少し田舎ということもあるのだろう。周辺に空き地が多くあり、その空いたスペースを活かした銭湯を作りたいと考えた。
そして、その空きの空間には時間をかけて緑地と化した暗渠なども絡まり、その緑を取り込んだような銭湯をつくることができたら、サウナやバーで居心地良いのではないかということになり、そこと親和性を出すために緑のオリジナルタイルを多治見で製作した。