永山祐子建築設計が設計した、東京・千代田区のオフィスビル「ESCON 九段北ビル」です。
コロナ禍に進んだ眺望の良い立地での計画です。建築家は、集合を喚起する固有の“魅力”を持つ存在を目指し、三面開口に加え角の柱を抜いた“迫りくる浮遊感”を持つ建築を考案しました。また、外壁の色を段階的に変えて見上げ時の印象も操作されました。
九段北に建つ12階建てのオフィスビルである。
皇居を望む南側、九段ハウスのある西側は富士山まで眺望が開け、圧倒的な眺望に恵まれた立地であった。
南側、西側、そして接道面である北側の3面を開くように東側にコアを寄せ、天空率により正方形に近い平面で縦に高さを積むことにした。上層階は特に皇居側、日本武道館への眺望も得られるので、スキップフロアとし、ワンフロアの中で眼下に広がる風景などさまざまな視点からのバリエーションある眺望を得られるようにした。
一方、下階は九段ハウス側の庭を望めるように、なるべくサラウンドに開口を取るように工夫し、テラスも九段ハウス側に設けた。当初、クライアントとの間でレジデンスにするかオフィスにするかという議論があった。どちらもプランニングし、検討の結果オフィスとすることになった。
コロナ禍の中、在宅ワークも増えている時期で、オフィスのあり方が大きく変わるタイミングであった。レジデンスとしても魅力的な立地だけれど自社ビルを売却する会社も出ている中で、私自身も小中規模程度のオフィスはニーズが高いのではないかとの思いがあった。コロナ以降、人が集まりたくなるオフィスとして、効率よりも空間性が求められ、ここにしかない魅力を持ったオフィスとすることが命題と考えた。