原山大+村上芙美子 / HaMAoが設計した、広島・尾道市の二世帯住宅「向島の家」です。
本土から島へ移住する家族の住まいです。建築家は、近隣との関係性の構築を主題とし、新たな建築を“既に存在する周囲の多様な状況”と繋ぎ合わせる設計を志向しました。そして、庇や外壁等の様々な要素が敷地境界を越えて周りと関わるように作りました。
本計画は新型コロナウィルス及び、それに端を発するウッドショック真っただ中に計画された住宅である。
フィジカルなコミュニケーションが避けられる風潮がある中、新たに本土から島に移り住む家族にとっていかに周辺との関係性を築いてゆくか、また、日々高騰する材料費を吸収するために、2世帯住宅として可能な限り面積を抑えつついかに広がりや豊かさを確保できるかが求められた。
尾道水道を挟んで対岸にある向島。計画地は海岸から1kmほど離れた内陸部(縦断距離が3km程度なので十分内陸と言える)の山裾に位置する。近くの主要道路は明治初期までは満潮時には島を南北に船で往来が出来た入り江であったことから、古くは半島の先端であったということが容易に想像できた。
計画地を境に、山側は緩勾配の地形を道に沿って個別にゆっくりと造成されたと思われる緑の多い風景が広がる一方、平地側は田んぼを分筆して宅地にした比較的小さな庭付き一戸建てが建ち並ぶ。敷地の目の前もまた、これから分譲されるであろう土地が広がっている。
このように建ち方や時間軸も異なる風景の結節点にあったどっちつかずの空地は、擁壁を背負う里道と合わせて、前面道路に対してほどよい広がりを持っていた。その場所に、まったく新しい要素を持ってくるのではなく、既に存在する周囲の多様な状況をひとつひとつ繋げ合わせるような建築を提案した。