井上亮+吉村明 / Inoue Yoshimura studioが設計した、神奈川・鎌倉市の「木洞窟の住居」です。
日照が懸念される“谷”の様な敷地に計画されました。建築家は、与件の下に“明るい空間”を求め、建面を限度まで使ったヴォリュームの上階に3つの吹抜を設けて採光する構成を考案しました。また、大きな気積で家族間の“心地よい距離感”を生み出すことも意図されました。
鎌倉の古い分譲地の1区画の建替え計画である。古家付きの土地を購入し、古家を解体してからの新築計画となった。施主は、小さな子供3名と夫婦の5人家族。遊びたい盛りの活発な男の子3名が住むこと、元々庭付きのマンションで暮らしていたこともあり、庭をつくること、そして鎌倉の風致地区を満たすように敷地の周囲に空地と植栽を植えていくことが必須条件であった。
土地は、ゆったりと2階建てが建てられる程度に広く、角地であったため採光に関しては比較的有利であったが、南側に行くほど土地が高く、南の隣地地盤面は、計画宅地よりも約2m程度上がっていたので、1階における南側からの採光は難しい状況にあった。また、東西方向には、少し離れると小高い丘と木々があり、計画地は、谷の下にあるような状態であったため日照時間が短いことも予想された。
谷のような立地に明るい空間をつくりたい。そんな想いで計画はスタートした。計画としては、敷地に対する建築面積を目いっぱいにとりながら、2階には大中小の穴(吹抜)を設ける計画とした。
吹抜上部の窓を介して下階へと心地よい光を入れることで、採光面で不利な状況を解決しつつ、住空間の気積を増やして5人家族が同じ空間にいても心理的に心地よい距離感を生み出そうと考えた。