堤庸策 / arbolと加藤鷹 / アシタカ建築設計室が設計した、兵庫・西宮市の「夙川の家」です。
四方を隣家に囲まれた旗竿地での計画です。建築家は、外に開くことが難しい条件に対し、周囲から内部を切り離して“独立した世界”を構築する設計を志向しました。そして、閉じた箱ながら中庭とドーム状空間で自然と四季の導入も可能にしています。
立地は兵庫県西宮市。周辺は自然が豊かで古くからの邸宅街が広がる夙川沿岸の閑静なエリア。地価が高く坪単価も比較的高いため、土地が細分化され密集しているエリアも多くみられる。
敷地は、そのような旗竿型のコンパクトな土地であり四方を2階建て隣家に囲まれ、決して条件が良い方ではなかった。しかしながら、クライアントは周辺環境の良さと幼い頃から慣れ親しんだ地域であるという点を重視し、この土地を購入された。
プライバシー確保に対し、外側に開くことが難しい敷地条件であったため、家の中にクライアントのための独立した世界をつくることを目指した。共有していただいた好みのインテリアイメージにはヨーロッパの空気感を感じるものが多く、意匠にもそれらの要素を取り入れることにした。
敷地に対して可能な限り大きく建物のフットプリントを設定し、外に閉じた箱型の計画とした。内部でも自然や四季を感じ取れるよう、比較的採光が確保しやすい北側の角に中庭を配置。その周りにホール(リビングダイニング)やキッチンなどのアクティブスペースを設けた。寝室や浴室といった個人の休息スペースは、必要最小限の大きさにして2階に配置した。(寝室の収納家具は、部屋割りの変化に対応できるよう可動式となっている)
この住まいの最大の特徴であるホールは、外に閉じた住まいの中で窮屈さを感じることなく、家族や親しい人達との時間を優しく包み込むことができるような空間を目指した。団欒を生む適度に求心性のある平面と、人が集まっても居心地の良さを担保できるドーム状の大きな気積によって空間に包容力を持たせた。