長坂常 / スキーマ建築計画が設計した、京都市の店舗「ル ラボ 京都町家」です。
フレグランスブランドの為に町家を改修する計画です。建築家は、“地域的かつ歴史的な文脈”を踏まえた空間を目指し、意匠から家具まで様々な問題に関して対話を重ねながら設計しました。そして、既存・新設部・商品が“溶け合う”様な状態を作り出しました。店舗の公式ページはこちら。
ニューヨーク発のフレグランスブランドであるLe Labo。
私が最初にこのブランドを認識したのは、2016年のロンドンでのことだった。ちょうどBlue Bottle Coffeeやダンデライオンなど工場型の店舗をヨーロッパやアメリカで多く見るようになっていた頃で、たまたまロンドンの街を歩いているときに、マットな黒いスチールの店先が印象的で実験室をイメージさせるようなLe Laboの個性的な空間が目に入ってきた。
興味はあるものの、正直ほぼ何のお店かもよくわからず、弱気な僕には入れなかった。その後友人にLe Laboというフレグランスブランドで、店内に手作業で調香するためのラボを備えたショップであることを教わり、その存在が僕の中で刻まれたのだった。
それから、Le Laboの店舗をいろいろなところで見るようになった。
そんな時に京都木屋町の築145年になる長屋があってフラッグシップストアを構えるのでデザインで協力してほしいという相談を受けた。荒削りで打ちっぱなしの建築に銅製の什器やヴィンテージの家具などを合わせた空間でブランドのイメージを確立してきたLe Laboは、使い古されたものや侘び寂びに美を見出す感覚ももっている。
そういった哲学を共有しながら、今回の計画はこれまでのコンクリート躯体の建物とは構造的にも様式的にも異なる京都の古い町家ということで、地域的かつ歴史的な文脈を踏まえたお店づくりをする必要があるとブランドと共に考えた。
和と洋をどのようにコンビネーションするべきか? そもそもどこで靴を脱ぐべきか? 例えば、畳の間でのディスプレイのあり方はどうすべきか? 和の空間でありながら立ったままで見られる高さの商品台はどうあるべきか? 照明がない時代に生まれた空間にどのように照明を取り込むべきか? 調合イメージをどのように和の空間の中に取り込むか? 商品を取り扱う上で空間を清潔にしたいが建物の既存部分をどこまで残すべきか? 木造の中でどのようにブランドの代表的な仕上げを取り込むべきか?……など、Le Laboとブランドプレジデント兼クリエイティブディレクターであるデボラ・ロイヤーと共に話し合いを重ねながら意匠面からプランニング、詳細な家具のあり方、アンティークの家具のセレクトまで行った。