迫慶一郎 / SAKO建築設計工社が設計した、福岡市の集合住宅「福岡モノクローム」です。
中高層建築の密集地での計画です。建築家は、現代の“バルコニーの空間的役割”を主題とし、開放率と量塊の操作でバルコニーを“半室内化”して“内部空間の延長”として使える建築を考案しました。また、白と黒の配色で立面に“抽象性”も付与しました。
地下鉄駅から徒歩3分、中高層の建物が密集する商業地域にこの集合住宅は建っている。不動産市場において標準化されたマンションの間取りは、周辺環境とは無関係に繰り返し用いられている。その結果プライバシーの確保が難しい場所では、昼夜カーテンが閉められたままとなる。内部空間とバルコニーの連続性は損なわれ、バルコニーの空間的役割が十分に発揮できない状況となっている。
この状況に一石を投じるため「最も閉じた」ファサードの集合住宅を設計した。面積参入されない屋外のバルコニーには開放率の下限が設けられている。その閾値に合わせて、白い直方体のボリューム表面をくり抜き、正方形と長方形の「ピクチャーウィンドウ」が市松状に並ぶファサードをつくった。バルコニーが半室内化されることで、内部空間が2m延長したような空間がつくり出される。住戸はこの「ピクチャーウィンドウ」を通して、街と限定的に繋がるようにした。
天井と同じ高さのサッシュにより内部空間とバルコニーが連続するようにした。これが実現できたのは、主要開口部分において逆梁構造を採用したことによる。長方形の「ピクチャーウィンドウ」において、逆梁は高さ650mm奥行き280mmの平台にもなっている。ここは強風にさらされることもないため、花壇など趣味のディスプレイをしてもらえたらと考えている。