髙濱健嗣建築設計事務所による、兵庫の住戸改修「T Flat」です。
二面を外気に面した区画での計画です。建築家は、開放的な家との要望に、水廻り等の機能を“木の箱”に集約して大きなワンルーム空間を確保する構成を考案しました。また、用途に応じてカーテンで間仕切れる仕様とし“家族の距離感”の調整も可能にしています。
築39年の鉄筋コンクリート造の3LDKのマンション一室のリノベーション。
夫婦と子供2人の家族が求めるのは、開放的な家。
開けた眺望を持つ2面採光の区画に対して、各窓から外の空気が感じられるようなカタチを想像した。
機能を詰め込んだ木の箱と、手掛かりとなる木の壁を配置し、そこにカーテンを引くことで、それぞれの場所を生み出すカタチ。そのカタチは、ワンルームであり、4LDKでもあるような距離感を作り出す。回遊性のあるカタチは、行き詰まりを無くし、声や気配、匂いや光を届けてくれる。
朝目覚めると、キッチン・リビングに気持ちの良い朝日が入り込み、「おはよう」の声がカーテン越しに寝室から聞こえ、洗面所から「おはよう」の声が返ってくる。お出かけして帰ってくると、窓から入り込む自然光が、玄関の方まで伸びている。お昼ごはんが出来れば、キッチンからの声や匂いが書斎に届き、みんなで食卓を囲む。「おやすみ」と先に眠る子供たちは、カーテン越しに感じる気配に安心して眠りにつく。
カーテンは遮光性の高いものとし、光のコントロールや、空調のコントロールに寄与すると共に、ほどよく音もコントロールしてくれる。
上階が屋外バルコニーとなっている部分には、断熱材を据え天井を仕上げることが必要となるが、木板張りや木毛セメント板、コンクリート打ち放しなど、異なる個性を持つ天井が、システマチックな十字の構造体の存在をより強調し、住居内の空間を支える力強い大黒柱のような存在へと転換される。仕上げの異なる各天井は、新しいカタチのゾーニングとリンクし、各室の性格付けの役割も果たす形式となっている。