今津康夫 / ninkipen!が設計した、大阪・羽曳野市の住宅「鉤の離れ」です。
施主の生家の傍らに建つ住まいです。建築家は、平面の形を“かぎ状”とし新たな植栽を施して、既存の庭を“新旧の二つの家を段階的に繋げる中庭”へと発展させました。また、内部では多様な樹種の材を不均一に使用して“たくましさ”を空間に付与しています。
大阪府南東部、生駒・金剛山系に囲まれた河内平野に拡がる羽曳野に建つ戸建て住宅である。
周辺には世界遺産の古市古墳群が点在し、豊かな自然環境をいかして古くから葡萄や無花果の栽培が行われている。建主がかつて暮らした生家である母屋の傍らに、幼い兄妹を持つ4人家族が暮らす平屋建てを描いた。
コの字型に屋根を連ねる母屋の庭には、亡父が愛した五葉松・山茶花・枝垂れ梅が主人を失って寂しそうに佇み、一方で日当たりの良い場所には、実母の育てるアガパンサス・アジュガなどの宿根草が軽やかに花を咲かせていた。
そのコの字を閉じるように平屋の離れを置き、隣家と母屋との距離をはかりながら、敷地の最奥で五角形を鉤状に膨らませて緩やかに庭を囲い込み、新たな植栽を施して新旧二つの家をグラデーショナルに繋げる中庭へとdevelopさせた。
五角形の方形屋根の頂点には柱を立てず、寄棟屋根との変換点に円柱を置き、黒のペーパーコードを巻いて存在感を持たせた。
南東の一辺には型板ガラスを嵌め、プライバシーを保ちながら、柔らかな光りと百日紅の滲んだシルエットを室内に取り込むことを試みている。構造材は熊野杉・床は吉野桧とし、随所にケヤキ・ニヤトー・ラワン・ラタン・オーク・ブラックチェリーの複数の樹種を敢えて不均一に混ぜて、日々の暮らしに相応しい逞しさを備えた。