



岩元真明+小嶋雪乃+屋宜祐李佳+渡邉雪乃 / 九州大学岩元真明研究室が設計した、福岡市の「九州大学オープンイノベーションプラットフォーム(OIP)」です。
産学官連携を先導する組織の新拠点です。建築家は、大学の活動の伝達も意図し、演習林の1本の杉を素材に選んで内装から家具にまで“無駄なく使い切る”計画を考案しました。また、学内の什器類の再利用も積み重ねてサーキュラーデザインも実践されました。組織の公式サイトはこちら。
九州大学の産学連携を司る九大OIP株式会社の新拠点「九州大学オープンイノベーションプラットフォーム(OIP)」の内装計画。研究の事業化支援や産官学連携の仲介などを行うオフィスであり、学外者の来訪も多い。
そこで、大学の多様な活動を垣間見せることをコンセプトとして設計を行った。
全体は約21x22mのワンルーム空間であり、大中小3つの会議室を島状に配置し、3つの部署とエントランスラウンジをゆるやかに分節した。各々の会議室とオフィスの各所では、大学演習林で育った木材や、戦前から使われてきた歴史的什器、学内研究者が開発した新建材など、学内の教育研究資産が積極的に活用している。
大学全体をいわば鉱山と捉えて材料をかき集め、教育研究活動の魅力を空間として表現する、大学ならではのサーキュラーデザインの実践である。
九大福岡演習林から樹齢約60年の杉を1本選び、内装材および家具材として使用した。
コンセプトは大径木の魅力を活かしつつ、無駄なく使い切ること。そのために材料調達プロセスを精緻にデザインし、伐採・製材・乾燥・加工の各段階において関連業者と緊密な連携を行った。具体的には、まず樹高約30mの立ち木を選び、そこから長さ2.8mの丸太10本を取る。次に、これらの丸太を短冊状に製材し、45mm厚の板材61枚と年輪材1枚を得る。このうち41枚の板材は小会議室の自立壁に使用。室内外に木の自然な曲線が表れる「杉板挽き放し」の壁である。
続いて、残った板材からオフィス各所のテーブルやスツール、デスク脚を制作。最後に、それでも余った端材をかき集めてエントランスのカウンターを造作した。これは将来のための木材ストックを兼ねた家具である。