工藤浩平建築設計事務所による、秋田市の住宅「楢山の別邸」。風土と環境に応える“普遍的な開き方”を追求。断熱性能のある“ガラスのダブルスキン”で包まれ、生活と風景が混じり合う連続性のある平面構成の建築を考案 / 立石遼太郎の論考“ドミノというシステム”も掲載俯瞰、北側から見下ろす。 photo©楠瀬友将
工藤浩平建築設計事務所による、秋田市の住宅「楢山の別邸」。風土と環境に応える“普遍的な開き方”を追求。断熱性能のある“ガラスのダブルスキン”で包まれ、生活と風景が混じり合う連続性のある平面構成の建築を考案 / 立石遼太郎の論考“ドミノというシステム”も掲載外観、敷地内の東側から見る。 photo©楠瀬友将
工藤浩平建築設計事務所による、秋田市の住宅「楢山の別邸」。風土と環境に応える“普遍的な開き方”を追求。断熱性能のある“ガラスのダブルスキン”で包まれ、生活と風景が混じり合う連続性のある平面構成の建築を考案 / 立石遼太郎の論考“ドミノというシステム”も掲載1階、南側のギャラリーからガラス越しにダイニングルームを見る。 photo©楠瀬友将
工藤浩平建築設計事務所による、秋田市の住宅「楢山の別邸」。風土と環境に応える“普遍的な開き方”を追求。断熱性能のある“ガラスのダブルスキン”で包まれ、生活と風景が混じり合う連続性のある平面構成の建築を考案 / 立石遼太郎の論考“ドミノというシステム”も掲載1階、リビングルームからダイニングルームを見る。 photo©楠瀬友将
工藤浩平建築設計事務所が設計した、秋田市の住宅「楢山の別邸」です。
風土と環境に応える“普遍的な開き方”を追求した計画です。建築家は、断熱性能のある“ガラスのダブルスキン”で包まれ、生活と風景が混じり合う連続性のある平面構成の建築を考案しました。また本記事では、立石遼太郎による論考“ドミノというシステム”も掲載します。
秋田県秋田市楢山にある自然公園の麓に、夫婦ふたりのための別荘のような住宅を計画した。
敷地は前面に住宅地が広がり、背後には自然公園である森が佇む。住宅街から森に向かって緩やかに登っていくような傾斜地である。森の深いところでは、カモシカやタヌキと出会うこともある。寒冷地であるがゆえに外と内の断絶が強くなりがちな秋田でも、こうした豊かな自然環境を日々の生活の中で身近に感じることができるような住宅を考えたいと思った。
秋田の厳しい環境下で、物理的に室外とつながる開き方ではない、環境と風土に沿った自然な開き方を探した。
例えば、厳しい寒さから身を守るためには、断熱材をくるんだ分厚い壁を建てるのが一般的かもしれないが、断熱材を空気層と置き換え、空気層をうんと分厚くし断熱材と同等の断熱性能を確保することによって、不透明な壁をガラスに置き換えてみた。
室内が明るくなることはもちろん、ガラスから漏れ出る灯りが、雪に覆われた街に明るさを取り戻すことになるだろう。
一見、ガラスのダブルスキンという外皮は寒冷地では特別なことと思われるが、室内環境は守りつつ、断続的に光を提供している様を見ると、この特別な外皮がむしろ秋田の環境に寄り添った普遍的な開き方ではないかと思う。
「生活」のなかに「風景」が混じっていくようなイメージをもって平面のあり方を検討した。
不透明な壁はどうしても視線を交錯させたくない場面にしか用いず、外部に対してはほぼ全面ガラス張りとした。その内側の立面を移動すると、外の風景が途切れることなく一連のシークエンスをつくりだし、徐々に方向感覚がほどけていくような、おおらかな空間を目指した。
寝室の外に広がる庭に目をやりながら、先ほどまで居たリビングからの住宅街が頭に残り書斎から見えていた竹林がキッチンからは遠くに見えて残像と重なる。このように、移動によって得た風景を脳内で貼り合わせ、「生活」のなかに「風景」が自然と入り込むよう計画した。