



黒川智之建築設計事務所が設計した、東京のコーポラティブハウス「国立テラス」です。
大きな庭が点在する歴史ある住宅街での計画です。建築家は、多世帯が集まって暮らす積極的意味を追求し、“生きたコモン”としての豊かな庭を備えた建築を志向しました。そして、通路や屋上などに様々なタイプの庭を設けて周辺環境とも呼応させました。住戸の内装設計は、黒川智之建築設計事務所とTENHACHIが担当しています。
国立市に建つ6戸の長屋形式のコーポラティブハウス。
敷地周辺は、大正時代に開発された高級住宅地で一つ一つの土地の区画が大きく、また一低層であるため建蔽率も低いため、まとまった大きさの庭が多く点在する。こうした庭の存在は、街並みとしての豊かさに大きく寄与しているが、区画の維持の難しさから一部では戸建て開発が進み、その豊かさも次第に失われつつある。
住宅街に建つ集合住宅は、その存在感・関係性の希薄さからネガティブな側面が語られることが多いが、今回のような敷地においては、むしろ多世帯で共同出資することによって大きな土地の区画と豊かな外部環境を維持することが可能となり、集まって住むことに積極的な意味を見出すことができる。
さらには、コーポラティブハウスという選択をとることで、庭の在り方について使い方から管理運用まで、具体性を伴った議論を設計段階から行うことができるため、投機的な集合住宅とは異なり、庭を「生きたコモン」として実現することが可能となる。
本企画は、入居者の確定に先行して募集用の設計案を用意する必要があった。
設計の考えの中心に「庭」を据え、住戸と庭が互いに定義しあう関係を求めていたが、募集段階で解像度の高い状態で設計案を用意することは、建築や庭の在り方を固定化してしまう。計画に柔軟性を持たせるため、形を規定しすぎず、補助線のように作用するルールを定めた。まずは6戸の住戸に囲まれた共用庭、襞状の外形が隣地側に生み出す専用庭、2階レベルの専用テラス、屋上のルーフテラスの4つのタイプの「庭」を用意した。この4つの庭が、生活空間を介して水平的・垂直的に結ばれ、更には隣接する敷地がもつ大きな庭に呼応しながら環境が紡がれていくということを考えの主軸としている。