


ネリ&フーが設計した、台北市の集合住宅「ザ・ラティス 至善レジデンス」です。
新旧の建物が混在する地域での計画です。建築家は、“時代を超えた美学”を体現を求め、同国の格子を再解釈した“カテナリー曲線のスクリーン”をRCグリッドの中に配する建築を考案しました。対照的な素材で繊細なバランスを実現させました。
こちらは建築家によるテキストの翻訳です(文責:アーキテクチャーフォト)
都市は冗長である――何かが記憶に残るように、それは自らを繰り返す。
記憶も冗長である――都市が存在し始めるために、それは印(しるし)を繰り返す。
― イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』
台北は、コミュニティの感覚や人間的なスケール感を保っている現代的な大都市です。新しいガラス張りの高層ビルのそばには、1970年代の魅力的なアーケード付き低層建築が共存しており、亜熱帯の気候は豊かな緑が生い茂り、都市の風景全体に織り込まれていくことを可能にしています。このプロジェクトの敷地は、士林区(Shilin District)の天母(Tianmu)の一部である至善(Zhishan)に位置しており、特に豊かな文化的背景を有しています。そこはかつて外国文化の玄関口であり、現在でも多くのインターナショナルスクールが集まる地域です。天母の住民は、この異文化的なアイデンティティを誇りに思っており、都市のより商業的な地域の喧騒から離れた、スローライフなライフスタイルを楽しんでいます。台北および至善という文脈の中で、ネリ&フーがこの高級住宅建築に込めた設計意図は、構築的な形態と触感的な素材を用いることで、時代を超えた美学を体現することでした。
セットバックを考慮したうえで、この建物のボリューム構成戦略は、通り沿いにおける力強い存在感を維持するため、北側の角にしっかりとした直角のエッジを持たせる一方、南側は鋸歯状の平面形によって柔らかく処理されています。立面は、上品な比率を持つ柱と梁によるグリッドでシンプルに表現されており、そして淡いグレーの石で仕上げられています。構造フレームの表現に軽やかさを加えるための、開放的なコーナーディテールもあります。グリッドの各フレーム内には、銅色の金属でできた逆カテナリーアーチ形のスクリーンが挿入されており、バルコニーを囲い、背後のガラス面に重ね合わせています。台湾各地の古い建物の窓上に見られる数多くの「花格子」スクリーンから着想を得て、ネリ&フーはこの見慣れた意匠を、洗練されたパターンと上質な素材によって、より大きなスケールで再解釈しています。構造とスクリーンという対照的な二つの要素が、男性的と女性的、歴史的と現代的、クールさと温かみ、理性的と表現的との間の繊細なバランスを達成するために、調和しながら機能しています。