



GROUPが設計した、山梨・北杜市の住宅「道具と広い庭」です。
自然豊かな環境の“広い庭”のある敷地での計画です。建築家は、居場所作りの為に“手入れ”が必要な状況に着目し、人ではなく“道具”を中心とする建築を志向しました。そして、同形の5部屋が並ぶ構成として其々に用途の異なる道具の収納場所を用意しました。
敷地は山梨県北部、八ヶ岳の裾野に広がる斜面地である。
木々に囲まれ、キジやシカなどの野生動物が姿を見せる。この自然豊かな場所に建つ住宅と広い庭を、建主やその仲間が、自ら手入れするためのさまざまな「道具」を軸に設計した。たとえばモンゴルでは、ゲルの内部では個人の道具の配置によって貸し借りの可否が決まっており、貸し借り可能な道具は地域全体で共有される。その前提として、すべてのゲルが正円の平面形を共有していることが、空間の均質性を保ち、道具の秩序ある流通を可能にしている。
この住宅では、平面形を揃えた5つの部屋を設け、道具の共有に一定の秩序が生まれる設計としている。
各部屋には、内部の設備と連動し、用途ごとに整理された道具が収納されている。西から順に、外構作業に関する道具、絵画制作に関する道具、料理に関する道具、入浴に関する道具、休息に関する道具。壁面には規則的に道具の出入口が設けられ、部屋が庭との距離を縮めることで、訪れるすべての人が、広い庭とのそれぞれの関係をかたちづくっていく。そして、この住宅は敷地に隣接する道に対して閉じるように壁を設けている。この壁は内部のプログラムを隠し、周囲の環境を映し出すスクリーンとなる。耐力壁をこの1カ所にまとめることで、各部屋を柔軟に使用できる。
訪れた人びとは、この壁によって建物を固定された用途に当てはめず、その時どきの目的に応じて再発見することができる。また、均一な寸法の間柱が建物を支え、内部全体に棚をつくっている。
自然豊かな場所で人の居場所をつくるためには、道具を用いた人による手入れが必要である。
私たちは、普段は建築の片隅に追いやられがちな道具置き場を見直した。だからここでは、人を中心に据えるのではなく、道具を中心に建築を構成している。そうすることで、責任が特定の個人に集中することなく、道具を介して関わるすべての人がその場所を共有し、誰もが広い庭の手入れに参加できる環境を目指している。