SHARE ブックレビュー”1995年以後~次世代建築家の語る現代の都市と建築~”
以下のテキストは、architecturephoto.netによる、藤村龍至/TEAM ROUNDABOUT初の著作『1995年以後~次世代建築家の語る現代の都市と建築~』のブックレビューです。出版社”エクスナレッジ“のサイトには書籍の概要が掲載されています。
この書籍を読む2週間ほど前、IANX:GINAZAにてLIVE ROUNDABOUT JOURNAL2009を見た。そこで行われていたレクチャーで感じたのは、その”場”が建築的な思考によって意識的に設計されているという事だった。
会場の構成、ステージと編集スペースの配置、タイムスケジュール、ゲストの組み合わせ、全ての部分に思考が感じられた。ゲストによるレクチャーが刺激的だったのはもちろんだが、それを演出する”場”は何よりも刺激的だった。
なぜ、それほど刺激を感じたのだろう。
それは、そこに、建築の、建築家の、可能性を見ることができたからだと思っている。
建築家が設計することができるのは建物だけではない、日頃培ったその思考で、建物と同じように全てのものを設計することができる。そのような強い意志が感じられたのだった。建築家の役割は、建物の設計だけにとどまらず、より幅広く拡張していくことができる。そう感じさせてくれた。
藤村龍至/TEAM ROUNDABOUTによる書籍『1995年以後~次世代建築家の語る現代の都市と建築~』を手にとって、眺めていて、上に書いたような事を思い出していた。
表紙がフリーペーパーになっており、それ自体が独立した読み物になっているという試み、親しみやすい紙の質感、適度な重さ、等々。モノとして大事に設計されている本であると感じた。この本もまた建築的な思考により考えられているのだと。
中身を見てみよう。
建築家の藤村龍至が中心となり、32組の建築家・研究者たちへインタビューしている。
(藤本壮介、平田晃久、長坂常、森田一弥、白井宏昌、倉方俊輔、満田衛資、中山英之、中村竜治、吉村靖孝、吉村英孝、重松象平、トラフ、中村拓志、石上純也、谷尻誠、大野博史、TNA、dot architects、松川昌平、北川啓介、平塚桂、田中浩也、永山祐子、藤原徹平、勝矢武之、柄沢祐輔、中央アーキ、長谷川豪、鈴木悠子、南後由和、ドミニク・チェン、大西麻貴+百田有希)
藤村という問題意識を明確に持った建築家が全てのインタビューに参加する事により、彼の思考を定点とすることで、各建築家・研究者の考え方・問題意識の違いが鮮明に現れている。
また、藤村のシンプルで、核心に迫る質問は、インタビューにリズムを生み出しており、テキストがすっと頭に入ってくる。そのリズムの良さから、ライトな感覚で読み進めることもできるし、気になった部分はじっくりと深く考えながら読むこともできる。
非常に読みやすい本であるともいえるし、深く考えさせてくれる本だとも言える。
建築家・研究者たちのインタビューは、生まれた年が早い順に並べられ掲載されているが、ページの最初から順に読み進めるのではなく、どこから読み始めてもこの本は楽しむことができるだろう。もしかしたら、そのような読み方の方がこの本をより楽しめるかもしれない。ランダムに読み進めることで、それぞれの作家論が対比され、新たな解釈が生まれる可能性が起きるからだ。
適度なボリュームにまとめられた32組のインタビューを読んでいくと、それぞれが、独自の理論・意識を持って活動している事がよくわかる。これだけ違った建築論が並べられれば、必ず一人は自身が共感できる建築家・研究者を見つけることができるのではないだろうか。その部分を追求することで、より深く建築を考えることができるようになるだろう。
『1995年以後~次世代建築家の語る現代の都市と建築~』は、新しい思考のきっかけを与えてくれる本だと思います。
1995年以後
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