SHARE 加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE “HIROSHIMA 2020 DESIGN CHARRETTE”
2月20日に広島で開催されたトークセッション「HIROSHIMA 2020 DESIGN CHARRETTEを巡る対話」の模様。
2010年6月6日に広島で開催される「HIROSHIMA 2020 DESIGN CHARRETTE」は、広島市の2020年夏季オリンピック・パラリンピック招致表明を受けて、自分たちに何か出来ないかという思いから立ち上がった、若手建築家/デザイナーによる未来のオリンピックにむけた提案です。
オリンピックとは? 建築とは?デザインとは?
大きな物語りを失ってしまったようにみえる現代において、いま僕らがやるべきこととは何か?
それを考えるための「HIROSHIMA 2020 DESIGN CHARRETTE」です。
このイベントで提示される建築やデザインが生み出す風景が、2020年の自分たちの暮らしをイメージするきっかけなれば嬉しいです。
Hiroshima 2020 Design Charrette
2020年広島オリンピック・パラリンピック招致に向けた若手建築家・デザイナーによる提案と議論
1. 開催趣旨:
Hiroshima 2020 Design Charretteを巡る3つの議論
広島を巡って
広島はいうまでもなく、人類至上初の核兵器がもたらした壊滅的な破壊から復興を遂げた都市である。100年草木も生えないといわれたこの街の復興を成し遂げた人びとを支えたものは、市民の総意としての、切実なる平和への願いであった。
丹下健三により設計された広島平和記念公園は、原爆ドームへと続く都市軸を中心に展開することによって、破壊された過去と、平和都市として復興した現在を、見事につなぐ存在となりえている。この都市軸は、人々の「一つの思い」を象徴しているといって良いだろう。
オリンピックを巡って
日本が直接的に経験した最初のオリンピックは、1964年に開催された東京オリンピックである。東京オリンピックは、奇しくも平和記念公園と同じ設計者による国立代々木競技場をはじめとして、数々の名建築を日本に産み落とす契機となった。
それと同時に、首都東京の都市機能整備が国家の一大プロジェクトとして行われたが、そこで形成された東京の姿は、現在の都市のあり方のひとつを示すまでになり得ている。
当時の東京の整備を象徴する首都高速道路は、既に成長を遂げつつあった東京に建ち並ぶビルの谷間と、わずかに残った空地との間を縫うように走り、蛇行とアップダウンを繰り返す。
その経済的な繁栄に彩られた姿は、軸線を中心に展開された広島平和記念公園と対照的なようにみえて、その実、都市の発展に向けて注がれた情熱は、原爆による廃墟から立ち上がった広島復興の原動力と共通している。すなわち、誰もが共有できる大きな夢を、当時の日本人は描くことができたのである。
2020年を巡って
そして2010年を迎えた私たちは、誰もが同じ夢にむかって共に歩むような「大きな物語」が、既に無効になったことを知っている。
社会の発達は、私たちの意志を、細分化された個々の価値観に基づいた、より自由なものへと変貌させた。それと同時に、バラバラな意志を統一しようとする目論見自体が意味を失ってしまった。
しかし、これは決して希望が見いだせない状況を意味しているわけではない。いま、多くの建築家やデザイナーが目指しているのは、バラバラな意志それ自体が、アイデンティティを持ちつつ、たがいが共存できるフレームワークとしての、建築や都市の新しいあり方である。
2000年代を経て、おぼろげながらに見えてきた次のディケードの方向性、すなわち2020年の建築の姿は、並み居る日本の有能な若手建築家やデザイナーによって、着実に示されつつある。
そしてHiroshima 2020 Design Charretteへ
広島市では、2020年の開催に向けて、夏季オリンピックの誘致活動を開始しつつある。そこで問われているのは、過去、多くの人間の意志を統一する器として機能してきたオリンピックというイベントを、多様な価値観が共存する現在の成熟した日本において、いま一度開催することの意味だろう。
しかし私たちは、2020年のオリンピックの意味と役割を再考するにあたって、建築やデザインが大きく寄与する可能性を、強く感じている。
このデザインシャレットを通じて、若手建築家やデザイナーが模索しようとしている「多様な意志を共存させる場の設計」を、オリンピックと接続することができたなら、個々人のさまざまな差異を超えて、それぞれがリアリティを感じられるイベントとして、オリンピックを引き戻すことができるだろう。それは、2020年の建築と都市のあり方を示すと同時に、21世紀のオリンピックの姿を、力強く提示するものとなるに違いない。
Hiroshima 2020 Design Charretteでは、多くの若手建築家やデザイナーによって、リアルで誰もが共感することができるオリンピックの姿が、様々に提示されるだろう。
また、デザインシャレットという形式をとることによって開示される、建築家とデザイナーのリアルな思考のプロセスは、2010年代の建築の方向性を指し示すものになると同時に、様々な提案に基づいて行われる議論は、私たちが共有可能な2020年を、明確にあぶり出すことになるだろう。
広島と、オリンピックと、建築の未来に向かって。私たちはHiroshima 2020 Design Charretteを開催します。
2. イベントの概要
若手建築家・デザイナーが自ら世界に発信する機会として、「Hiroshima 2020 Design Charrette」を行ないます。具体的には、2010年6月6日(日)に、広島にて「シャレット」形式で提案し、ディスカションを行ないます。また7月には、デザインシャレットの成果を展示する「エキシビション」を開催します。イベントの成果は、「フリーペーパー」としてまとめます。
デザインシャレットの概要
開催日時:2010年6月6日(日)
開催場所(予定):広島市まちづくり市民交流プラザ(〒730-0036 広島市中区袋町6-36)
スケジュール(案):
09:30 – 15:30 シャレット形式で提案(一般に公開)
16:00 – 18:00 第1部ディスカッション
18:15 – 20:15 第2部ディスカッション
# 提案者は、第1部・第2部のいずれかのディスカッションにご登壇いただきます。
エキシビションの概要
7月に広島にて2週間程度の展示を行った後、東京でも展示を行う予定です。(場所等未定)
フリーペーパーの概要
デザインシャレット当日の模様、提案者による作品、ディスカションの内容等をまとめ、「エキシビション」等において無料配布します。
3. 提案要項について
シャレット提案者には、下記の要項(案)に基づき、提案をしていただきます。当日は、提案に必要な材料・用具等は準備しておく予定です。また、学生ボランティア4名程度が各提案者のサポートを行う予定です。
・提案者それぞれが、2020年に広島で開催されるにふさわしいオリンピックのあり方を、当日の規定時間内で提案していただきます。最終的な成果物は、施設配置計画図や、施設計画図など、ハードとしての建築のあり方をきっちりと示すようなものでなくても構いません。たとえば、オリンピック競技が行われているシーンのスケッチ、多数のスタディ模型の羅列、オリンピックを鑑賞するための新しいプロダクトやデバイスの提案、などでも構いません。
・同様に、広島オリンピックの全体像(マスタープラン)やコンセプトを、必ずしも示す必要はありません。繰り返しになりますが、単体の施設やモニュメントはもちろんのこと、「広島」「オリンピック」「2020年」というキーワードに関連してあり得る提案であれば、どんなものでも構いません。むしろ、2020年の広島オリンピックの多様な側面を、皆さんの提案から明らかにしたいと考えています。また、提案内容に基づくディスカッションは、広島オリンピックの様々な側面から、その全体像を提案者が一緒に想像するようなものにしたいと考えています。
・提案者の皆さんには、提案用の資料を事前に配布いたします。また、実行委員が事前に相談を行い、ご希望の場合は、より詳細な資料(写真、既存施設の模型、図面等)を用意いたします。
・オリンピックの歴史や、施設配置の変遷に関する資料も、事前に配布する予定です。
・広島市が提唱している2020年広島オリンピックの基本理念(下記)は、できるだけ尊重してください。ここで掲げられている基本理念を、新しい建築のあり方として具体化していただければ幸いです。
1)「2020ビジョン」における核兵器のない世界の実現記念の「平和の祭典」として広島市を中心に開催する
2) 2020年までに温室効果ガス25%削減の目標達成の一里塚とする
3) 広島市を中心としながら、一部の競技については、複数都市での開催も検討することで、オリンピックの新たな可能性ならびに展望を提案する
4. 組織
Hiroshima 2020 Design Charretteは、下記の組織により運営されています。(2010年2月23日現在)
企画・運営:
佐々木 高之(アラキ+ササキアーキテクツ一級建築士事務所)
小川 文象(FUTURE STUDIO)
運営協力:
佐々木 珠穂(アラキ+ササキアーキテクツ一級建築士事務所)
岸田 佳晃(アラキ+ササキアーキテクツ一級建築士事務所)
田村 尚也(FUTURE STUDIO)
赤木 利徳(FUTURE STUDIO)
アドバイザー:
木原 一郎(株式会社フルステージ)
白井 宏昌(London School of Economics and Political Science)
デザイン:
古本 浩(aruco design.)
渡辺 恵(mi e ru)
ディレクター:
加藤 孝司(FORM_Story of design)
門脇 耕三(首都大学東京)
5. 事務局・連絡先
Hiroshima 2020 Design Charretteの事務局は、下記の通りです。ご連絡等は、下記までお願いいたします。
【広島事務局】
〒733-0863 広島県広島市西区草津南3-4-11
フューチャースタジオ一級建築士事務所内
TEL: 082 276 4150
FAX: 082 276 4151
Email:info@futurestudio.jp
【東京事務局】
〒181-0001 東京都三鷹市井の頭2-1-12
アラキ+ササキアーキテクツ一級建築士事務所内
TEL: 0422 43 9890
FAX: 0422 43 9890
Email:arakisasaki@mbe.nifty.com
6月6日のシャレットに先立ち、ゲストに谷尻誠氏を迎えてトークセッション「 HIROSHIMA 2020 DESIGN CHARRETTEを巡る対話」が2月20日広島で行われました。
2月20日に広島で開催されたトークセッションの模様
右:佐々木高之(建築家 アラキ+ササキ・アーキテクツ)、左:小川文象(フューチャースタジオ)
加藤孝司(FORM_Story of design)
木原一郎(アーバニスト)
門脇耕三(首都大学東京)
アフターパーティーの様子